辰と竜

来年は辰年だが

『辰』という文字は本来は二枚貝(ハマグリ)が口を開けて足を伸ばした様を写した象形文字だ。この辰がどういう過程を経て十二支に組み込まれたのかについては既に忘却の彼方となっている。図は Wiktionary-辰から拝借した。

ハマグリから伸びた足は波打っているので、辰の派生儀に「波打つ」「振るえる」もある。
気象現象を意味する雨冠に振動の辰を加えた『震』は雷、特に雷鳴を意味する文字となっている。易の卦の『震』は雷鳴の卦というわけだ。

Wiktionary-辰によると、辰は以下の意味も持っている。

  • たつ。十二支の5番目。
  • 時間。日和。
  • 星。

星や時間の意味がどのようにして辰に付加されたのかは分からない。なお六壬だと『日辰』というと、日干と日支を指している。この用法は時間や星の意味とつながっているのだろう。

このように『辰』が元々のハマグリからかけ離れた意味まで持つようになったため、改めてハマグリを指す文字が作られた。それが『蜃』だ。辰に生き物を指す虫が加えられている。

中国では『蜃気楼』は巨大なハマグリが吐きだす気によって生み出される幻の楼閣と考えられていた。それは日本でも引き継がれていて蜃気楼には“かいやぐら”の訓がある。

さて十二支辰の命獣は竜ということになっている。十二支の中で唯一の空想の動物と言われているけれども、私は揚子江アリゲーターが竜の原型だったと思っている。

Wiktionary-龍では『竜』は『龍』の古字だが、殷の時代の金文を見れば分かるようにトカゲの類の王として冠をつけた文字が『竜』の原型だ。前足のようなものがあるので、ヘビではなくトカゲだろう。

ということで、竜が揚子江アリゲーターであったことにはかなりの信憑性があると考えている。

十二支には命獣にちなんだ獣肉があり、自分にとって吉となる十二支の獣肉を食べることで開運できたりするわけだ。辰の獣肉は亀とされているけれども、竜が揚子江アリゲーターだったことを考えるとワニ肉の方がより相応しいだろう。