土御門晴親卿の易占

義理易による怪異占

ちょっと前に twitter でフォローしてる漫画家の松浦だるま先生がこんな tweet してた。


で、どんな卦を得たのか知りたくなって梅田先生の論文*1にあたってみた。

京都に滞在中の讃岐から来た御坊さんが、毎夜変な気配を感じて布団の上に何か乗っかって来る感じに不安を覚えたので、伝手を頼って土御門晴親卿に占ってもらったのだそうだ。晴親卿は筮を執って解之訟を得た。多分、中筮法を採用したのだろう。

五爻上爻が変じている。

晴親卿は本卦の解の卦辞から、これは怪異ではなくて旅の心労であるとした。それでも心配なら西南に良医がいると付け加えている*2。実際、解の卦辞はこうなっている。

解、利西南无所往、其來復吉有攸往夙吉*3
(解、西南に利あり往く所なし、其れ来たりて復すに吉往くところ有り。夙に吉。)

復が病気回復の卦であるように、解の卦辞も病からの回復を告げている。そして西南に利あり、だ。
晴親卿も安心して怪異ではないと告げたと思う。

ただ義理易で怪異を判断するとしたら、どんな卦が怪異を告げているだろうと少し考えてしまった。まず第1感は豊卦だ。豊には以下の奇怪な爻辞がある。

九四豐其蔀。日中見斗。遇其夷主。吉*4

昼間に北斗が見えたという爻辞だ。ただ六十四卦に1つしか怪異の卦が無いというわけではないだろう。
思い付くのは游魂卦*5と帰魂卦だ。断易では八純卦を基本の卦として、初爻から爻を変じて行き、五爻まで変じて一から五世卦とする。そして6番目は四爻を再度変じて游魂卦とし*6、次いで下卦全体を逆転させて元に戻した卦を帰魂卦とする*7
なので例えば乾宮は五世卦が剥で游魂卦が晋、帰魂卦が大有になる。まとめてみる。

   乾   兌   離   震   巽   坎   艮   坤 
游魂卦 小過 大過 明夷 中孚
帰魂卦 大有 帰妹 同人

この辺りが怪異の卦ではないだろうか。晴親卿が得た解卦はもちろん怪異の卦ではない*8

*1:梅田千尋陰陽頭土御門晴親と「怪異」』,アジア遊学 (187), 177-181, 2015-08(東アジア恠異学会編『怪異を媒介するもの』)

*2:陰陽頭土御門晴親と「怪異」』による。

*3:雨粟荘倉頡計畫易經下経から拝借した。

*4:雨粟荘倉頡計畫易經下経から拝借した。

*5:『遊魂卦』でも大丈夫だと思う。

*6:結果的には一、二、三、五爻変。

*7:結果的に五爻変。

*8:之卦の訟は離の游魂卦なのを無視しているのは多分、晴親卿の合理性故に怪異なんてそうそうあるもんじゃ無いという判断があったのだろう。