坎と離
☵ | ☲ |
坎卦は卦画では陰爻によって陽爻が挟まれている。離卦は逆に陰爻が陽爻によって挟まれている。説卦伝はいう、坎は水である、と。水は器によって容易に外形を変化させるけれども、その中に剛陽を抱えている。離卦は明であり火だ。ロウソクの炎を見れば分かるように、外炎が明るく内炎は暗い。坎は陽卦で離は陰卦となる。五行の生成順序では最初の水行が陰、次の火行が陽なので五行の感覚とは逆になっている。
私が最近はまっている百合マンガに『田所さん』がある*1。背が低くて中学時代イジメに遭ってたために目立たないように生きているけど、マンガを描くのが好きな田所陰子さん、そしてその絵にハートを撃ち抜かれて絵を追いかけている内に田所さん自身を好きになってしまった二階堂桜子さんの百合百合なマンガだ。二階堂さんは、背が高く一見して華やかな雰囲気をまとっていて、学業も優秀、高い身体能力まで持っているスーパー御嬢様だ。
この二人を八卦に当てはめるなら、田所さんは坎卦、二階堂さんは離卦が相応しいだろう。田所さんはマンガへの情熱という剛陽を、イジメに遭わないよう目立たないようにするという陰爻で包んでいる。二階堂さんの離卦は内に陰を抱えている。実は二階堂さんが自分の意志でつかみ取ったのは田所さんへの愛が最初だったようだ。pixivの連載の中で二階堂さんはこう語っている。
私は父に完璧を求められ色々な事を学びました
その中には体術を鍛えるものもありました
幼い頃はずっと思っていました
普段守られている私が
こんな護身術や格闘術を学ぶ事に何の意味があるのか
二階堂さんは、お父さんの求めるままに様々な事柄を身に付けたけれども、それは自分の意志によるものではなかった。多分、二階堂さんは自分に確固とした軸がないのを自覚している。だからこそ自分でマンガを選んで自分のハートを撃ち抜いた絵を身に付けた田所さん自身を好きになったのだろう。
二階堂さんは、先の引用に続いてこう語った。
意味はありました
陰子さんを守れたから
二階堂さんは田所さんを好きになって田所さんを守っていく中で、それまで自分になかった軸ができて行くのを感じているのだろう。二階堂さんは『お付き合い』の中で自分が人間的に急成長している自覚があると思う。でもそのことを田所さんに伝えることは無いだろう。自分の成長という功利的なものは純愛を濁らせるだろうから。なお離の象には太陽、坎には月が含まれる。月が太陽の光を受けて輝くように、二階堂さんの光を受けて田所さんも輝きはじめている。もっともそのせいで、クラスの人達と打ち解けてきた田所さんを見ていて嫉妬に駆られる二階堂さん、まだ軸が決まってないよね。でもそこが可愛い。
なお、二階堂さんは田所さんよりも背が高く*2、ガーディアンでもあるので、普段はお姉さんぽい振る舞いが多いけど、閨房では田所さんのことが好き過ぎて気絶してしまうというポンコツぶりを発揮している。気絶するグルグル目の二階堂さんがまた可愛い。
まぁ長々書いてきたけど、みんな田所さん1、田所さん2を読んで幸せになろうぜ。『田所さん』は魂が薄汚れたジジイにこんな文章を書かせるくらい素敵なマンガだ。
なお、エントリ・タイトルの『水火既済』は離卦と坎卦の組み合わせの一つで、易が求める究極の形だ。