文研出版『家相入門』

40年近く前*1に出版された家相の本がある。

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東洋占術
家相入門

文研出版から出たものでタイトルは『東洋占術家相入門』、著者は佐藤文栞さん*2で、これが出版された当時は透派絡みの一般書の多くが文研出版から出版されていた*3

この本は従来の気学家相に多くのページが割かれているけれども、色々と画期的な本だった。

  • 大熊光山の言葉を紹介して、古い家相を切って捨てている。
  • 家の使い勝手に言及している。
  • 八宅派の詳細な観法をそれとなく紹介した。

大熊光山の言葉というのは以前にも紹介した以下だ。

上掲書26頁
ところが、先生は「この水・火・汚物は、現代建築学では、半分以上は解決されている。新建材によって、昔とちがった衛生的な建築物は、昔のような水・火・汚物の家相観では狂ってくる。もし昔のような家相をいうならばむしろ家の凹凸をいって、空気と光線の問題を重要視した方がよい」と現代的な説をいわれてます。

また家の中での動線について言及し、使い勝手の良い家こそが吉相なのだと主張し、家相よりも人間が大切という節で上掲書を締めくくっている。

面白いのはこの当時としては珍しく八宅派の理気について触れられていることだ。それも好く知られた大遊年変爻法の大雑把な理気ではなくて、かなり詳細な観法だ。

  • 八宅大門法
  • 小遊年変爻法

八宅大門法は、玄関の向きと門の向きによる吉凶という形で紹介されている*4ので、ひょっとしたら八宅大門法とは異なっているかもしれないが、八宅大門法と好く似た技法が紹介されている。

それと小遊年変爻法を、それとなくではあっても40年近く前に紹介した一般書は、この本くらいしかないのではないだろうか。二十四山に八卦をふって宅卦と二十四山の卦を帰蔵して得られた八卦を八宅の吉凶に置き換えるこの方法は、二十四山の吉凶を出す方法として重要だ。USAの葉清海公の講座でも“Ba Zhai”という名前で八宅の理気を教えている。

帰蔵卦
八宅 延年 天医 六殺 禍害 五鬼 絶命 生気 伏位

もし私がマンションの1室の風水鑑定を頼まれたとしたら、エントランスの向き辺りからマンション全体の向きを出し、向きとマンションの建てられた年からマンション全体の吉凶を出した後に、小遊年変爻法と何階かからその部屋の吉凶を出すところから始めるんじゃないだろうか。

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安倍晴明
「占事略决」
詳解

余談だけど以前mixi地理風水のコミュに、八宅が風水じゃないと宣たまう御仁が現われたので、ここは地理風水のコミュなので場違いとコメント付けたら、絡まれた上にコミュとは無関係の拙著の『安倍晴明占事略决」詳解』にまで因縁付けられて、非常に不愉快だった。

*1:1973年初版。

*2:名前だけから判断すると、日本透派の掌門は六龍さんじゃなくて文栞さんになるけど、実のところどうなんだろう?

*3:『五術占い全書』も最初は文研出版だった。

*4:不思議なことに『陽宅遁甲図』が出てこない。