叙述トリック

信頼できない語り手

知人の大海水さんは、断易の研究家でもあり時々藤田善三郎公の『五行易師弟問答*1』の中から選んだ項目について、得卦と占的から自分なりの推測を立てた上で答え合わせをやっている。先日の23日にも『ヘボ探偵、天を仰ぐ』というエントリがあがっていた。

『金を貸す吉凶』に対して酉月己丑日に占って乾之夬を得たことについて、このエントリで大海水さんは、

用神妻財が弱く、忌神兄弟が強い。
これは凶と判断した所、

と考えたけれども、正解は、

世爻が動いて妻財爻の「墓庫」に変化し、
無事お金は戻ってきた。
しかし、貸した人とは不仲になってしまった、という実例。

であったと。納得のいかない大海水さんは色々考えるのだけれども、『金を貸す吉凶』が必ずしも『金が返済されるか』を意味しているとは限らないことに気がついて得心がいって天を仰いだという話になっている。

普通は『金を貸す吉凶』とくれば『金が返済されるか』と理解するだろうところを、金を貸したことによって発生する人間関係に焦点をおいて卦を読み、その過程で「金は返ってくるけれども」という展開は、ちょっとした叙述トリックみたいで面白かった。まさに著者の藤田公は『信頼できない語り手*2』が相応しいと思う。

もっとも卜占には『占的の転移』という問題があるので、占者自身が信頼できない語り手になってしまうことがままある。私の六壬にしたところで道は遠い。