占いと統計

『占いは統計だ』とか言われると、私なんかはイラっとしてしてしまう。占いというものは、時刻なり乱数なりを与えられてその案件に関わる象徴を出すところまでは、非常に機械的な手続きの連鎖だ。占いが“sciense”ではなく“arts”なのは、算出された象徴を現実と結びつけその吉凶を判断する部分で、どうしても人間の感性が必要になってしまうところにある。

ただ占い師の技量を統計的に検証することは充分に可能だろう。しかし、それをやる時に問題になるのは『多重検定』による誤った判断だ。最近では『美人ほど女の子を出産する確率が高い』という話がネットで広まったけれども、元になった論文における統計的な検討に多重検定の誤謬があって、正しく検討すると美人かどうかと生まれた子供の性比は関係なかったそうだ。

この話については『[進化][統計]「美人ほど女の子を産む」はウソ?:A. Gelmanによる統計的欠陥の指摘のメモ−Take a Risk: 林岳彦の研究メモ』が詳しいので一読を御勧めする。

多重検定の問題点については、NATROM先生の『多重検定によるタイプ1エラー』が詳しい。検定回数を増やせば増やすほど、本来は存在しない有意差を見つけてしまう可能性が増すという話だ。私にとっては、カテゴライズする際にある程度の恣意的な分類が必要になるけれども、その恣意性から本来は存在しない統計的な有意差が見えることがある、は非常に重要だった。

占い師の技量を統計的に検証する時には気をつけておきたいところだ。まあ占い師の技量の評価でこういう検討が必要になるわけで、術の優劣を統計的に検証するなんてことは無理と考えておいた方が良いだろう。

ところで本多信明先生が統計絡みでこんなことを書いていた*1

そもそも第7室に火星を持つ人の確率はどのくらいかというと、12分の1(12ハウス)×9分の1(インド占星術で使用する惑星の数)で1%に満たない。

端的に言えば間違っている*2。他の星が7室に入っていると火星は7室に入ることはできないといった制約は存在しないので、火星が7室に入る確率は12分の1になる。すごくありふれた事象だ。ただこれとてハウス分割の方法によって変化する可能性の検討は必要だろう。

ついでに言うと発生確率1%の事象は割と目にする印象がある。稀な事象というとやはり発生確率が0.3%以下になる2σの外の事象だろうな。

[2012/07/22追記]
知らない間に以下が追加されていた。

これは他惑星が絡まない方が純粋に法則をとらえやすいという前提である。

では、第7室に火星とそれ以外の星があると『クジャドーシャ』ではないということなんですかね?そうではないでしょうに。それと、離婚率ということでしたら、2010年日本の全国平均では1000人あたり5.5人が離婚していて単純にパーセントに直すと0.55%ですから、

しかし、一般的な意味における死別生別の夫婦の比率はもっと高い筈で、

なんてとても言えませんよね。

私だったら『クジャドーシャ』はありふれており、離婚するかしないかは『クジャドーシャ』だけでは判断できない、と言うでしょうね。

*1:もう直したかもしれないけどね。

*2:確率や統計の知識なしに労務管理なんてできないだろうに。