六壬神課や奇門遁甲には伏吟と返吟と名付けられた概念がある*1。これは作盤を行って、占断の要素を配布した結果、それらが定位にある状態を伏吟、冲の位置にある状態を返吟とするものである。
伏吟は変化がない状態であり、突っ伏して動けず苦しみ呻吟する象をもつ。返吟はその逆で、激しい変化の中に放り込まれて呻吟する象をもつ。
六壬における伏吟・返吟は、六壬天地盤において天地が同じものが伏吟、天地相冲の状態が返吟である。いうまでもなく六壬の天地盤は、サインとハウスだけのホロスコープに対応している。なので西洋占星術にも伏吟・返吟の概念があるはずと思い込んでいたが、どうもそうではないようだ。
mixiのアカウントのある人は、古典占星術コミュニティの「レセプション」トピック
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=10408831&comment_count=48&comm_id=1304393
34番から始まるホラリーの占例についてのコメントのやりとりを見ると良いだろう*2
■ | 金 旺 水 相 土 休 火 囚 木 死 | ■ | 日 禄 亥 日 徳 亥 寅 卯 空 亡 | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ |
■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ||
■ | ■ | ■ | ■ | ■ | 妻 財 | 乙 巳 | 貴 人 | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | 月 将 巳 壬 子 日 亥 刻 | ■ | ||
■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | 慶 徳 格 | ■ | 返 吟 課 無 依 格 | ■ | ■ | ||||||
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■ | ■ | ■ | ■ | ■ | 兄 弟 | 辛 亥 | 天 空 | ■ | ■ | ■ | ■ | |||||
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■ | ■ | ■ | ■ | ■ | 妻 財 | 乙 巳 | 貴 人 | ■ | ■ | ■ | ■ | |||||
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■ | 兄 弟 | ■ | 白 虎 | ■ | 妻 財 | ■ | 騰 蛇 | ■ | 兄 弟 | ■ | 天 空 | ■ | 妻 財 | ■ | 貴 人 | ■ |
■ | 子 | ■ | 午 | ■ | 亥 | ■ | 巳 | ■ | ||||||||
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■ | ■ | 午 | ■ | ■ | ■ | 子 | ■ | ■ | ■ | 巳 | ■ | ■ | ■ | 壬 | ■ | ■ |
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件の占例の時刻で課式を立てるとこんな感じになる。件の占例では就職を占って、不採用の結果となった。そして話題の中心は、不採用という結果をチャートから読み取ることが困難だ、どこに着目するべきかである。しかし六壬者なら、「能力もあるし、相手も悪い企業じゃないけど、時期が悪いね、向こうは内部がバタバタしていて、多分、新規採用どころじゃないと思うよ。」という判断になると思う。
判断の基準は、
- 天地相衝の返吟課。
- 発用を制するものがない。
- 発用は囚と弱い。
こんなところだ。
ところが件のスレッドでは、返吟に対応するような話が一つも出てこない。どうも西洋占星術には返吟・伏吟の概念がないようなのだ。ひょっとして過去にはあったが失われてしまったのか?とも考えたのだが、つらつら考えてみたところ、伏吟・返吟は六壬に特有の概念ではなかったかという結論に落ち着いた。
何故そう考えたかというと、
つまり六壬において、
- 伏吟課が早くから独立していたのは、賊尅が取りにくいからである。
- 賊尅のない返吟課は陰陽無親格として別扱いである。
と考えたためである。賊尅は五行の相生相尅に基づくものであり、中国占術に特有のものである。ということで、伏吟・返吟は六壬ないし中国占術に特有という結論に落ち着いた。ホラリーに返吟・伏吟を持ち込むと面白いかもしれない。