周易の独習

張さんのおかげで周易が使えなくなっていたのだが、最近徐々に復調の兆しがある。多分、卦象が少し見えるようになって来たことが影響しているのだろう。つらつら考えてみるに、周易の独習というとみんな似たような道を通るのではないだろうか。

最初は簡単な入門書を買ってパラパラめくる。多くは卦辞の解説が中心で彖伝象伝がちらっと出てくるくらいだ。少し分厚くて高い本だと爻辞の説明が書いてあったりする。卦を出すのもコインで三変筮が中心だろう。で、卦辞を読むと結構当たっていたりする。

卦辞とか爻辞の解説をほぼそのまま鵜呑みにするのを多分、御神籤易と呼ぶのだろうけど、初めのうちは御神籤易で充分だし結構当たる。上達したところでかなりの部分は御神籤易でなんとかなるし、またなんとかする素直さが必要だったりする。中上級と初級者を分ける一番大きな部分は、御神籤易ではなんともならない場合かどうかを判断する能力だろうし、御神籤易ではなんともならない場合への対処の方法があるかどうかだろう。

易の神様には意地悪なところがあって、上達するとそれまでの経験を越えるような卦とか出してくるような気がする。なんともならない場合には卦象で対応することが中心になるだろう。卦象といっても色々なレベルがあって、基本卦が使える場合、基本卦からも外れていて、6つの爻が織り成すパターンを物語でも読むように読み取らないといけない場合がある*1




快癒の基本卦
兌之随*2
と長い前振りで基準卦絡みの占例の話をする。玄珠さんに教わったところでは、病気が治るかどうかについて占った場合は基準卦を復とする。つまり得卦の卦象が復に近い卦ほど良く治り、復で本復というわけだ。最近できた知人は結核で4ヶ月という長い闘病生活を送ったのだが、入院中に易の本を買い病気の快癒について占った。コイン3枚の六変筮で占ったようで、得卦は兌の二爻変だった。 占った当人は「吉。正しく行なうことで人を喜ばせるという象意なので、医師の指導に従うことで快癒と判断し」たのだが、私の第一感は凶だった。最近の印象として兌はそんなに吉ではないという印象がある。これは驚門の定位が兌であることが影響しているが、多分、兌が吉であるのは割と限られた分野だけではないだろうか。また入院経過からすると既に一度再縫合しており、兌の形を傷とみれば傷が重なっている卦象でもある。 ここで之卦を見ると随であり、内卦は震であり快癒の基準卦である復と異なっているのが、外卦の二つの爻であることがわかる。おそらく本当に易に詳しい人が見れば、ここで基準卦を使って「本復には遠いからあせらない方が良いよ。」とアドバイスできたのだろう。私はそこまではできないので、「傷が二つ重なっている形にも見えなくないので御用心を」程度のことしか言えなかった。 結果としては、再度傷を切り開いて縫い直すという事態になった。しかしここまで来れば私にも基準卦が見えた。つまり外卦の陽爻を切り開けば陰爻となり外卦は坤となる。となればこれは快癒の基準卦復そのものだ。ということで私は自信を持って「これで快癒するよ」ということができた。現実にはは8月10日に傷を切り開いて縫い直す手術があり、それで傷が塞がることになった。手術後の経過は順調で9月5日に退院となった*3。 しかし易の神様は普通は初心者には御神籤易でなんとかなる卦を出してくれるのだが、いきなり卦象が必要な卦を出している。よっぽど素質があると見込まれたのだろうか。それとも私に基準卦復の使い方を教えてくれたのだろうか。

*1:後者で有名なのは真勢中州の失物占だろう。本卦から之卦への変化から湯屋での脇差の取り違いの様子を読み取っている。

*2:10/01追記 之卦を間違っていました。大石さんありがとう。

*3:結核の場合、傷がくっつきにくいらしい。