奥多摩ドライブ

太占の痕跡を追って

関東は面白い所であり、近世まで太占である鹿卜を伝える神社が3ヶ所あった。武蔵御嶽神社、阿伎留神社、そして群馬の貫前神社だ。奥多摩の武蔵御嶽神社、阿伎留神社は山を挟んで両側にある。阿伎留神社には『神伝鹿卜秘事記』が伝わっているし、御嶽神社は今でも正月3日*1に太占の神事が斎行されている。

『神伝鹿卜秘事記』によると阿伎留神社の鹿卜は、対馬忌部氏から伝わったものとなっている。対馬を本貫の地とするであろう阿比留氏が東漸して千葉に畔蒜として定着していることを考えると頷ける話ではある。ただ大江篤先生の話では、出土物として鹿卜に使った鹿の肩甲骨はありふれているけれども、亀卜の出土物は対馬壱岐、そして三重の一部に限られるそうだ。なので亀の甲羅が入手し難いがために鹿の肩甲骨を使ったのかどうかについての判断は保留するしかない。

ということで、まず阿伎留神社を目指した。カーナビに阿伎留神社をセットして出発したのだけれども、少々変な所に案内された。丁度、阿伎留神社の宮司を務める家柄の阿留多伎家の墓所の前だった。伴信友と親交があり、伴信友の『正卜考』の鹿の肩甲骨の図の元になった図が収録されている『神伝鹿卜秘事記』を伴信友に見せたという*2阿留多伎貞樹の御墓もあった。

御墓の向こうに阿伎留神社があるのは間違いないので、少し車で移動したら阿伎留神社についた。当然、御参りする。

そして境内に占方神社があったので御参りする。

そして御嶽神社に向かった。御嶽神社周辺は車での立ち入りが禁止されているので、ケーブルカー乗場の駐車場に車を停めてケーブルカーで御嶽神社に向かう。車でなくても欲望の街新宿から中央線に乗って2時間くらいで御嶽神社まで来ることができる。関東はやはり面白い。
ケーブルカーを降りてからかなり歩く。前に来た時と比べると石段が整備されていて少しは楽になっていた。そして前回と違ってワンコ連れをやたら見る。なんとか御嶽神社についた。

この拝殿のさらに奥に色々と神さんが祀られている。案内の掲示が整備されていたので、今回は太占神事が斎行される場所を見ることができた。

この案内の右手の石段を下りたところに平らな場所があって、そこで太占神事が斎行される。非公開で立ち入り禁止だった。

御嶽神社は元は『大麻止乃豆天神社』と言ったそうだ。神道研究家の竹内健氏によれば『大麻止』は『大真戸』であって、顕幽の境界に位置する門で『大戸』とすることもあるそうだ。顕幽の境界に位置する門なので、占いをする場を聖別し幽界とこの世をつなぐ卜庭神としている。そういえば、今の祭神の櫛真智命は占いの神でもあり、元は『大麻等乃知神』といったということで、大麻止乃豆天神が占いの神であったのは間違いないだろう。

境内には櫛真智命の御御籤もあった。
参道の脇に御嶽神社大麻止乃豆天神社であったことの名残がある。

おまけ ケーブルカーに乗ったらこんなカードをもらった。

それと以前見た鹿肉のレトルトカレーが無くなってた。代わりにイノシシのレトルトカレーがあった。

*1:今日だ。

*2:神道研究家の竹内健氏はそう考えている。