古代ローマの学者であるクラウディオス・プトレマイオスが、古代エジプトのアレクサンドリアを活躍拠点として『テトラビブロス』等の著作を行ったというのは有名な話だ。
『テトラビブロス』の『テトラ』は『四つの』の意味を持つ接頭辞で、『ブロス』は『ブック』つまり書籍ということなので、『テトラビブロス』は『四巻構成の書』といった意味になる。『テトラビブロス』は、ギリシャ占星術を集大成したもので、現存する中では占星術の一番古い古典だ。
インド占星術の研究で名高い矢野道雄先生*1は、その著作の密教占星術で、現代では失われた宿曜道のテキストの一つである『聿斯四門経*2』について、『聿斯(いっし)』はプトレマイオスのことであり、『四門経』は『テトラビブロス』のことではないかという着想を表明されている。
ただ、これは矢野先生にとっても大胆な仮説であったようで、慎重な検証の必要な『反論を期待する仮説』とされている。
ところが先日、私のtwitterのTLにこんなtweetが飛び込んで来た。
所用でアレクサンドリア図書館について調べてたら「プトレマイオス二世とマウリア朝のアショカ王との外交関係を考慮すれば、インドの仏典がここに収蔵されていたことを疑う理由はない」(周藤芳幸『ナイル世界のヘレニズム』p.96)という記述をみつけて「ほーん」みたいな顔してる
— ジャーヒズさんちの司書@クバード卿 (@palmofcordoba) 2016年5月19日
アレクサンドリアの図書館にインドの仏典が収蔵されていたのなら、テトラビブロスがインドに伝わっている可能性は非常に高いだろう。ならばそれが中国にもたらされて『聿斯四門経』となっても全然不思議なことではないだろう。