納音五行の計算方法

納音五行の計算方法は、元々は、干と支の太玄数から計算していたようだ。干の太玄数は甲、己を9として、乙と庚は8、丙と辛は7、丁と壬は6、戊と癸は5となっている。支の太玄数は、子と午が9、丑と未が8、寅と申が7、卯と酉が6、辰と戌が5、巳と亥が4となっている。

支の太玄数は、江戸の頃に時を現すのに使用されていた。明六つ、暮六つは卯刻と酉刻を指している。落語の時蕎麦の冒頭で1文誤魔化すのに成功したのが『九つ』だったので、江戸の人達が子刻の深夜まで活動していたことをしめしている。忍者が使っていたという話もある、猫の目時計の口訣「六つ丸く、四八瓜ざね、五と七と玉子なりて、九つは針」も太玄数から来ている*1。六つは先程書いたように卯刻と酉刻、五つは辰刻、七つは申刻、四つは巳刻、八つは未刻、九つは午刻、というわけだ。

で、この太玄数を使ってどのように納音五行を算出するかの例を挙げてみる。甲子の納音を計算するためには、甲子と乙丑について太玄数の総和を出す。

甲=9 子=9 乙=8 丑=8
9+9+8+8=34

34を5ではらうと4となる。納音五行は火が1、土が2、木が3、金が4、水が5の対応関係となっているので、4は金行となる。ということで甲子の納音五行は金となる*2。計算結果を表にしめす。

甲乙丙丁戊己庚辛壬癸
子丑
寅卯
辰巳
午未
申酉
戌亥

支の太玄数は子と午が同じ9となっており、他の対冲の関係の支も同じ値が割りつけられている。そのため甲午から癸亥までの納音五行の並びは、甲子から癸巳までの納音五行の並びと同じになる。

この太玄数から計算する方法は、暗算でやるにはちょっと面倒なので、昔から便法が考えられてきたようだ。その方法では十干については、甲乙を1、丙丁を2、戊己を3、庚辛を4、壬癸を5とする。十二支については子丑午未を1、寅卯申酉を2、辰巳戌亥を3として、甲子なら1+1=2となる。1〜5を木金水火土に対応付けて、2なら納音五行が金となる。この方法は『簠簋内伝』伝辺りには既に出てくるようだし『天保新選永代大雑書萬暦大成』にも『魂の数をしる方法』として収録されている。

またこの計算方法を基にして掌決で納音五行を計算する方法もあり、故鮑黎明先生の『飛星紫微斗数闡秘』に解説がある。掌決では午以降が子から巳までの繰り返しになるので、午で基点に戻ってくるという掌決としてはちょっと変則的な繰り方になる。私は面倒なので、午以降は午から数えることにしている。

*1:ただWeb上の猫の目時計の解説には、九つを子刻にしている図が沢山あって吹いた。夜中の猫の目なんて瞳孔開いてるに決まってるじゃん。

*2:当然のように乙丑の納音五行も金となる。