久しぶりに周易でも

周易の本2冊

ここしばらく六壬漬けで、その反動なのか久しぶりに周易の本を読んでいる。実家には2冊周易の本があり、私が周易に触れた最初はやはりこの2冊であった。一つは黄小娥の易入門で、私と同年代かそれ以上でカッパ・ブックスから出たこの本で周易を知った人は多いんじゃないかと思う。読み返すとやはりいい本だと思う。

基本的に卦辞しか書いてないわけだが、始めて周易をやる人にはこれで充分だろう。1年くらいは「周易って当たるよな」と楽しめると思う。そして1年くらい経つととたんに当たらなくなる。大方の人はそこで「やっぱ占いは占いだな。当たるも八卦、当たらぬも八卦か。」といってやめてしまうだろう。だが少数の人は爻辞というものがあると知って爻辞で「あ、やっぱり当たるかな。」と思うときもあるだろうけど、じきに「やっぱ当たんないじゃん。」となってしまう。

ところが極少数の人は卦象ってもんがあるとか、勝負占は基本形が地天泰なんだ、とか色々な知識を仕入れていくところに踏み込んでしまう。ただ、やっぱり当たらない。けど聞いた話ではそれを5年くらい続けると当たるようになってくるらしい。

そういった意味で「易入門」は、入門書としては必要にして充分な本だ。新装版で復刻されたらしい(ISBN:4763195808)。なお黄小娥は入門書しか書けないヘタレではなくて実占家としてもそれなりな人*1だったのが本書の随所に見て取れる。例えば大壮で勝負占の話をしているんだけど、大壮が敵陣に一歩踏み込んだ形をしていると、勝負占の基本は正しくおさえている。2、3変なところもあるけどいいでしょ*2

で、ちょっと本格的に周易をやってみるかと思ったとき、易経の現代語訳が座右に一冊欲しいところだけど、私の御奨めは徳間書店から出ている「易経」(ISBN:4198605912)です。この易経の現代語訳は、他の本と違って儒教臭さよりは原典に忠実であるところに重きが置かれていると思う。天山遯の説明でちゃんと豚と関わりがあると書いているし、雷地豫では予には3つの意味があるとちゃんと書いてくれている。

昭和の易聖、加藤大岳の占例に、大岳が頼まれていた講義が出来なくなって代講を頼んだ話が出てくる。実は代講を頼んだ人と連絡がとれなくで困っていたときに、大岳が占って予初爻を得て安心したし、実際にその後連絡が付いたという占例だ。予の初爻は「鳴予凶」なのになんで?と疑問に思った弟子が大岳に聞くと、「予はあらかじめ以外の意味もあって、楽しむという意味があるのだよ。初爻は四爻と対応していて四爻は陽で実だ、ところが初爻は陰で虚なのだ。虚なのに実の四爻のマネをして楽しもうとする、それが凶なのだ。連絡が付くか付かないかは楽しむこととは関係ない。」(大意)といったことを答えたと聞く。なので私としては朝日文庫よりは御奨め。

*1:ただ昔々、六龍さんは「黄小娥は易入門で稼いだ金を株で全部すったんだ」と悪口を言っていた。ほんとか嘘かは知らない。ただ六龍さんは「だから周易じゃなくて断易なんだよ。」と言いたかったんじゃないかと今にして思う。

*2:伊藤博文安重根に襲撃される前に得た卦が水山蹇のように書いてるところとかね。