分杭峠探訪

以前にTVで紹介されていた、分杭峠に行ってみた。何でも、分杭峠付近を少し谷に下りたあたりに強い気が出ている場所があるとか、その付近では地磁気が非常に弱くて磁石がクルクル回るとかいわれている。

中央自動車道駒ヶ根でおりて天竜川を越えて少し行ったあたりから、どんどん山道を登って行く。途中何度も道を間違えたかと不安になったが、ぶつかったT字路に「分杭峠へ1km」とありほっとする。分杭峠は標高1,424mに位置するらしい。下界と違ってまだ寒く、雪がかなり残っている。なお、この付近は入山規制が行われているようで、動植物はおろか石ころの類も持ち出し禁止になっている。

分杭峠の付近は大規模な砂防工事が行われており、分杭峠の辺りにも工事用の車両の出入り口みたいなところがある。そこを少し入ったところに、誰かがベニヤ板で作った「磁場入口」とよくわからない案内が出ている。ここが気の出る場所への入り口なのだろう。

標識   気の出る場所への入り口
写真1. 分杭峠の標識.   写真2. 入口看板.

そこを入ると人が踏み固めて作ったような道らしいものがある。入ってすぐは人手て作られた階段状のものがあるが、すぐに木の根を踏み固めた階段に変わる。すれ違うのも容易ではない。

少し行くと木で柵を作って土留めをした所があり、そこがテラス状になっていて何人かの人がたむろできるようになっているが、雪解け水でグチョグチョになっていて、座ったりできる状態ではなかった。次に来るとしたら夏がいいかなと思った。気が噴出している場所と聞いたが、私は体感できなかった。もっとも私の感度が低いからだといわれたら、そうかも知れないとは思う。

念のため羅盤で磁場を見てみたが、ちゃんと静止して同じ方向をしめす。今日は分杭峠の調子が悪いのかもしれない。

分杭峠には水の出るところがあると聞いていたので、ポリタンクとペットボトルを用意していったが、水汲み場までの道?*1がぬかるんでいたり、雪が残っていたりでかなり危険そうである。しかし、ここの水を御祝い事に使おうと思ってここに来たので、木の枝とかをつかみながら下りてみる。

地中に打ち込んだパイプから水が絶え間なく出ている。御丁寧に「飲料用ではありません」の立札があるが、親切な人がジョウゴを置いてくれている。最初に御祝い用の大きいペットボトルと帰りの車中用の小さいペットボトルに水を汲んで、たむろ用の所に置いてこようと思うが、帰りがまた大変で急斜面の雪を踏みしめながら登った。

そして再度下りて、ポリタンクに水を汲む。羅盤と水とで10kgくらいの重量を身に付けて、細い踏み分け道の急斜面を登るが、これがまた大変で息が切れる、ハァハァを通り越してゼイゼイいいながら車に戻った。喘息の名残か肺の換気能力が低下している。

息を整えるために周囲を少しウロウロする。峠から少しいったところに「中央構造線博物館」があることがわかった。やはりもう一度来てみようと考える。中央構造線は日本列島を貫く大断層である。TVでも分杭峠の気と中央構造線に何か関係があるのでは?という形で取り上げられていた。ひょっとすると台湾を縦断する中央の断層も中央構造線とつながっているのではないだろうか。*2

中央構造線は海洋プレートが大陸プレートに衝突してできた断層で、断層にそって押し上げるような動きと同時に断層に沿って平行なズレが発生している。中央構造線以前には今の岩手県付近の地塊が長野県付近の地塊と同居していたらしい。中央構造線がある程度安定した次の段階として、日本列島が弓形に湾曲して大陸プレートから引き剥がされ、このときフォッサマグナができた。そして張り出した西南日本の東部が伊豆・小笠原海底山脈と激しく衝突し、このエネルギーが最終的には富士山を作り出すことになる。

まさしく「太乙、夷を折り、息穣、連山を成す*3」の世界である。富士山は日本列島を形成する主要な3つの地塊の結節点に位置しているわけで、世界の山龍が日本列島を目指したときの星峰として相応しい。

帰りは諏訪湖SAに寄り道して、SAにある温泉に入ってのんびりしてきた。湯上りに呑む分杭峠の水はまだ充分に冷たく、疲れが癒される感じだった。*4

*1:ただの斜面といった方がいいか。

*2:中央構造線博物館で質問してみたところ、台湾を貫く断層は別物であった。

*3:孔子暗黒伝」より

*4:飲料水ではないという立札にも関わらず、身体に異常は感じなかった。