洛書の記憶

中国占術に関わっている人間なら誰でも知っているように「洛書」は巨大な亀の背中にあった文様から読み取られた古代の魔方陣で、文献としては春秋時代の「尚書」まで遡ることができる。しかし奇門遁甲の創始伝説にはそれよりも古い記憶が残されているのかもしれない。

太白陰経の巻九遁甲式の冒頭、遁甲総序には以下のようなことが書かれている。

  1. 黄帝が蚩尤を征伐しようとして72戦したが勝つことができなかった。
  2. 夢の中に金人*1が現れて符を授けるといわれて目を覚ました。
  3. 黄帝は符を探したが見つけることができなかった。
  4. 風后、力牧に聞いてみたところ、力牧は「それは天帝です。」と答えた。
  5. そこで盛水に壇を築いて天帝を祭った。
  6. すると巨大な亀が現れて含んでいた符を壇に置いて去った。
亀が出てくるところが洛書の伝説に似ているのはもちろん奇門遁甲の話題である以上、洛書の魔方陣と関連した話なのは間違いない。

しかし話の内容はかなり具体的であり、洛書の伝説の原型はこちらかと思わせる内容となっている。*2

これは煙波釣叟賦でも受け継がれており煙波釣叟賦の冒頭にこの伝説とほとんど同じものが出てくる。*3

*1:多分、金色に輝く人物といったところだろう

*2:伝説は後代になるほど記憶が薄れて行くものと仮定してだが。

*3:この伝説の部分を小分けにして一部が後代の挿入だと力説している御仁もいるがとんだお笑いだ。