45年くらい見続けた幻

泰山の月律分野蔵干

この45年くらい「阿部泰山の月律分野蔵干で午の蔵干には己が無く丙と丁だけ」と確信していて、他人にもそう言っていた。しかも「ちゃんと読んでいないけど淵海子平はそうなってるんじゃないの?」というオマケ付きで。そうしたら、ちゃんと淵海子平をチェックしてくれた術友がいて、

このあいだ淵海子平の午の蔵干に己が入ってないと言ってたので調べてみたら、淵海子平の午の蔵干に己入ってました。淵海子平じゃなく違う本だったのか気になってます。

と教えてくれた。愕然とした私は実家に置いてある泰山全集の17巻『四柱推命極意秘密皆傳』を読み返してみた。すると23頁に、

今假りに甲日に生れて午の月節に生れたものありとすれば節入後十日間は初氣の丙を採る故に食神となる十一日より十九日目迄卽ち中氣の間に生れたものは己の蔵干を採る故正財となる、

とあった。泰山全集2巻の蔵干表にも午の中気に己が入っている。つまり、私はこの45年くらい間違った思い込みをしていて、他人にもそう語ってきたということになる。しかしこうして事実を確認した今でも、私の脳裏には十二支を孟仲季にわけて午に己が無い蔵干を書いた書影*1が、浮かんでくる。記憶の捏造は恐ろしいものだ。

ともあれ、これまで間違ったことを言い続けてきました。申し訳ありません。そしてチェックしてくれた術友に感謝します。

*1:泰山全集の17巻の書体が使われている。

9月くらいまでは実家メインです

母の骨折に関係して

4月末に母が転倒して右上腕骨を骨折しました。整形外科での見立てでは、そんなに酷い骨折ではないそうです。ただ骨がくっつくのに1ヶ月半~2ヶ月はかかるだろうとのことでした。そして骨がくっついてからリハビリということになります。そのため実家メインの生活を余儀なくされることになりました。自宅メインになるのは9月以降になりそうです。不義理を重ねることになりますが御寛恕下さい。

Windows 10に標準添付のLINEを動かすことにしました*1。携帯電話の番号で検索するとつかまります。Skypeも動かしているので、通信鑑定とか通信講座は可能です。直接の対面鑑定は愛媛県松山市近辺なら可能です。宜しく御願いします。

*1:こういう行儀の悪いソフトを動かしたくはなかったのですが。

やっぱ私って殆(あやう)いよね

『五術』という用語

私が中学だったか高校の頃に文研出版から『五術占い全書』が出て、占術を命・卜・相*1に分類して体系化することが一般的なった。実際、便利で私もよく使う。ただ、この用語や体系化はそんなに古くはなくて近現代のものなんじゃないかと思っている。昨日の鏡リュウジさんのtweetでそんなことを思い出した。

@で返信もしたけど、西遊記では五術という体系化はなされていないので、『五術』という体系化は新しいと考えているわけだ。中野美代子さんの翻訳による岩波文庫西遊記では、不老不死の術を求めてやってきた孫悟空に対して須菩提*2祖師が何を学びたいかを問うているのだけれど、そのときにこんな説明をしている。

  • 道という大きな 門のなかには、傍門*3が三百六十もある
  • 例えば、《術》の門、《流》の門、《静》の門、《動》の門
    • 《術》の門は占い全般
    • 《流》の門は諸子百家
    • 《静》の門は瞑想や内丹
    • 《動》の門は動功と外丹

ということで『五術』という体系化ではない*4西遊記というよく知られた講談本*5で『五術』による体系化の話が出てきていないことから、西遊記がまとめられた明の時代までは『五術』は、存在していなかったか、一般に通用する用語ではなかったと考えている。

それで、この五術という体系化は張さんが作ったものでもおかしくないと思っていたのだけど違っていた。

やっぱり私は、罔(くら)いか?殆(あやう)いか?と聞かれれば殆(あやう)い方だよよね*6

西遊記というと『華蓋』を思い出す

神煞の一つに『華蓋』がある。華蓋は本来は傘で綺麗に飾り付けられた儀式用のものだったようだ。神煞の出し方からすると月墓とでもよぶべきもので、生月十二支の三合会局で墓にあたるものが華蓋になる。なので辰・未・戌・丑の季支の生まれは必然的に月柱に華蓋がつく。西遊記の『法身元運逢車力、心正妖邪度脊関』の回で、孫悟空が華蓋についてこんな説明をしている*7

父母生下你来、皆因命犯華蓋、
妨爺剋娘、或是不招姉妹、
才把你捨断了出家。

最初の2句は、「生まれた時に、あなた達全員、華蓋があった」、最後の1句は「それであなた達を出家させた」で間違いない所だろう。
「妨爺剋娘」の「爺」は父親、「娘」は母親を指しているようだ。中野美代子さんは「両親の運勢を妨げたり」と訳している。問題は「或是不招姉妹」で、そのまま「姉妹が育たなかったり」と訳している場合もあれば、中野美代子さんのように「姉妹に婿が来なかったり」と訳している場合もある。

今の所n=1だけど、私の父の一番上の伯父は華蓋のある人で、男の兄弟は8人、女の兄弟は2人でしかも割と早く亡くなったという例があるので「姉妹が育たない」の方じゃないかな、と考えている。

*1:と医・山

*2:釈迦の十大弟子の一人で解空第一、無諍第一、被供養第一とされるスブーティから取られている。

*3:金丹の道ではないということ。

*4:不老不死を求める孫悟空は、どれもが不老不死につながらないと知って嫌だと断るのだけれども、ここで須菩提祖師と悟空との間でちょっとした軽妙なやり取りがある。

*5:しかも『皇極経世書』を読んだ人間が作者として参加してる。→参考

*6:論語為政第二『子曰、学而不思則罔、思而不学則殆。』

*7:原文中國哲學書電子化計劃から拝借した。適宜、日本で通用している文字に直している。

インドにはティティがあったじゃないか

宿曜についての続き

前のエントリは、

ただそれでも、

  • 十五夜が望とは限らない以上、傍通暦の起点は十五日ではなく望の瞬間を含む日ではないか?
  • 閏月の処理はどうするべきなのか?

という疑問は残る。現代のインド占星術では、この辺りはどう考えているのだろう。

と、投げた感じで終わったけれども、少なくとも前段については実際の日付、つまり朔を含む日を1日として1日毎に増える日付ではない、ティティ*1の導入によって解消される問題ではあるだろう。ティティは1朔望月を30分割したもので、古くは朔から望まで、望から次の朔までをそれぞれ時間的に15分割して決めていたようだけど、現代では月と太陽の黄経差が12の倍数となる時刻毎にティティが進むようになっている*2。朔から望までが白分、望から次の朔までが黒分となっている。なので黒分第1ティティの始まりは望の時刻ということになる。ティティは言ってみれば朔望月の日付のイデアだ。

ティティで傍通暦を作れば月の速度の変化や『名月が満月とは限らない』といった問題からは逃れられる。しかしだ、1朔望月がきっちり30ティティということを考えると、何故、宿は27という月の公転周期をベースとする数なのか?という疑問が頭をもたげてくる。朔望を重視するなら29とか30じゃん。インドじゃティティ毎に神さんがいて吉凶を司っているんだし。

と、また投げるのだった。

話は変わるけど、インド天文学はティティみたいなもので1朔望月を理想的に30という綺麗な数にしているのに、惑星についてはそのまま受け入れていて、中国が作り出した木星イデアというべき太歳がなさそうなのが何となく面白い。

*1:朔望日と訳されている。

*2:二十四節気の恒気と定気みたいだ。

やはり傍通暦なのか

宿曜については色々思うことがある

毎日の月が位置する宿の算出方法は、通常は『傍通暦』を使うと思う。この『傍通暦』は以下の仮定に基づいている。

  • 月は毎日一つの宿を移動する。
  • 太陰太陽暦の十五日は満月で、月は太陽と衝である。
    • 結果、太陽が位置する黄道十二宮の中央の宿と真反対の宿が月の位置する宿である。

この仮定が、かなり荒っぽいことは言うまでもない。例えば、太陰太陽暦の十五日は満月とは限らない。これについては、国立天文台暦計算室が運営している暦Wikiに『名月必ずしも満月ならず』という項目があったりするわけだ。十五夜の月=名月は満月とは限らないことが説明されている。こんな荒っぽい仮定に基づく傍通暦は、あんまり信用できなくてSwiss Ephemerisもあることだし、どこかで各宿の位置データでも手に入れてちゃんと計算した方が良いのではと考えてみたりもした。

ところが大久保占い研究所の『宿曜占い・宿曜術における「宿」の求め方』のエントリを読むとまた考えが変わった。このエントリでは、朔望を重視するのが本来の宿の求め方である、ということになっている。つまり傍通暦こそが、本来の宿の出し方と言ってるわけだ。

ただそれでも、

  • 十五夜が望とは限らない以上、傍通暦の起点は十五日ではなく望の瞬間を含む日ではないか?
  • 閏月の処理はどうするべきなのか?

という疑問は残る。現代のインド占星術では、この辺りはどう考えているのだろう。

桃花

桃花運を上げる呪法

人間誰しもモテないよりはモテたいと思うものだと思う*1。以前、圓寂坊御師さんが桃花運を上げる呪法ブログにあげていたのを思い出した。実際に桃の花を使って桃花運を上げるという、ちょっとロマンチックな方法だ。圓寂坊の御師さんは占術方面からは一切手を引いてしまったので、御師さんのブログも今後どうなるかわからない。ということで、こちらでサルベージしておくことにした。

だが、ふと以前銭老師から習った桃花運をUPする呪法を思い出したので、それをメールに書き添えて、花を添えた。

…というわけで、ついでにその呪法をこのブログでも紹介して皆さまのお役に立てていただければと思う。これは男女通用の法である。

―以下メールからの引用-

  1. 桃の花の鉢植えを買ってきます。(かわいがって育てる)
  2. その鉢植えを自分の生肖(えと)の方角に設置します。
  3. 設置する方角というのは、自分が寝ている場所から見てということです。(屋内ですので磁石を使って正確に測りましょう)
  4. 花が咲くころになったら、蕾や開花した花を3回、掌でやさしく撫でてやります。(毎日&出かける前などに行う)

以上の呪法をすることにより、桃花運が開けて異性にもてるようになるということです。…花の咲くころまで待たねばならないでしょうが。(^^ゞ

ブログじゃないサイトの方にあった『台湾雑話』とか武術関連の記事とかサルベージしておけばよかったと思うものが多い。この桃花運のエントリは間に合って善かった。

なお、桃花運が上がるとモテますが、好みではない人からも好かれるようになりますので御注意を。

*1:例外はあるだろうけど。

龜卜についてダラダラと

大嘗祭絡みで

新帝即位にともなって大嘗祭が執り行われるわけだが、大嘗祭の神人供食で用いられる米の産地は亀卜で決められるのだそうだ*1NHKの『大嘗祭に使う米を選ぶ占い「亀卜」 道具の映像を公開』という記事で、亀卜で使用される亀の甲羅など道具の写真があげられていた。それに触発されて以下のtweetをした。

神祇官太政官と同格なので、太政官配下の中務省の下にある陰陽寮陰陽道から見ると3つ上のランクになる。亀卜はかっては、それくらい格式高い占いだったわけだ。

関東の鹿卜は現代では、御嶽神社で正月三日に行われる十穀の占いだけになっているが、かっては3社で鹿卜が行われていた。奥多摩阿伎留神社御嶽神社群馬県富岡市一之宮貫前神社がそれだ。阿伎留神社については以前鹿卜の調査に行ったことがあり『阿伎留神社で「神伝鹿卜秘事記」と神字和歌に出会う』というエントリをあげている。阿伎留神社では太陰太陽暦の十月亥月に鹿卜を行っていた。この亥月に亀卜を執り行って来年の五穀の収穫を占うというのは中国起源もしくは東アジアの伝統に則ったものと考えられる。前漢武帝の時代に、淮南王劉安が編纂させた『淮南子』の『時則訓』には以下の記述がある*2

孟冬之月、招搖指亥。
……
是月、命太祝、禱祀神位、占龜策審卦兆、以察吉凶。
(是月、太祝ニ命ジ神位ヲ禱祀セシメ、龜策ニヨリ占イ卦兆ヲ審ラカニシ、以ッテ吉凶ヲ察ス。)

亥月には亀卜で占っていたわけだ。

余談だけど、この辺りのことを教えてくれた玄珠さんは、亥月には筮竹、算木や八卦賽をヤロウ*3に埋めて、筮具の呪力を回復させるのだそうだ。

閑話休題、阿伎留神社に伝わる絵巻物である『年中十二祭神事絵巻』によると、焚火をしてその周囲に竿竹の先につけた鹿の肩甲骨*4を立てて並べて、焚火の輻射熱でヒビを入れて占ったようだ。鹿の肩甲骨1枚で一つの占いという肩甲骨を贅沢に使う占いとなってる。

ただ大嘗祭絡みの亀卜は、阿伎留神社に伝わった鹿卜とはヒビの入れ方が異なっているようだ。というのは亀卜の道具に『波波迦木(ははかぎ)』が含まれているからだ。波波迦木はウワミズザクラの小枝のことで、NHKの記事では『燃料』となっているけれども、材質が堅い*5という特性を考えると単なる燃料ではないだろう。つまりウワミズザクラの小枝の先端を燃やした後に炎を消して、燃えさしの火を亀の甲羅に直接に押し当ててヒビを入れたのだと考えられる*6。勿論、押し当てる場所にはマチガタが切ってある。

なおウワミズザクラには香りが強いという特性があり、洋の東西を問わず*7神事等で使用される植物は香りが重要となっている。

*1:候補地の中に故郷の愛媛県から久万高原町が入っている。

*2:原文は『中國哲學書電子化計劃』から拝借した。適宜、日本で通用している文字に置き換えている。

*3:蓍(メドキ)と同様にノコギリソウの一種でハーブティで使用されるので、乾燥したヤロウは簡単に入手できる。

*4:勿論、ヒビが入り易いように油抜きをし平に削った上で、ヒビの起点となるマチガタを掘ったものだ。

*5:植木ペディア記事による。

*6:材質が硬いことによる火持ちの好さが利用されている。

*7:例えば西洋のベルティンの祭りでは、香りの強い枝葉を燃やして、その煙を浴びる。