やっぱ私って殆(あやう)いよね

『五術』という用語

私が中学だったか高校の頃に文研出版から『五術占い全書』が出て、占術を命・卜・相*1に分類して体系化することが一般的なった。実際、便利で私もよく使う。ただ、この用語や体系化はそんなに古くはなくて近現代のものなんじゃないかと思っている。昨日の鏡リュウジさんのtweetでそんなことを思い出した。

@で返信もしたけど、西遊記では五術という体系化はなされていないので、『五術』という体系化は新しいと考えているわけだ。中野美代子さんの翻訳による岩波文庫西遊記では、不老不死の術を求めてやってきた孫悟空に対して須菩提*2祖師が何を学びたいかを問うているのだけれど、そのときにこんな説明をしている。

  • 道という大きな 門のなかには、傍門*3が三百六十もある
  • 例えば、《術》の門、《流》の門、《静》の門、《動》の門
    • 《術》の門は占い全般
    • 《流》の門は諸子百家
    • 《静》の門は瞑想や内丹
    • 《動》の門は動功と外丹

ということで『五術』という体系化ではない*4西遊記というよく知られた講談本*5で『五術』による体系化の話が出てきていないことから、西遊記がまとめられた明の時代までは『五術』は、存在していなかったか、一般に通用する用語ではなかったと考えている。

それで、この五術という体系化は張さんが作ったものでもおかしくないと思っていたのだけど違っていた。

やっぱり私は、罔(くら)いか?殆(あやう)いか?と聞かれれば殆(あやう)い方だよよね*6

西遊記というと『華蓋』を思い出す

神煞の一つに『華蓋』がある。華蓋は本来は傘で綺麗に飾り付けられた儀式用のものだったようだ。神煞の出し方からすると月墓とでもよぶべきもので、生月十二支の三合会局で墓にあたるものが華蓋になる。なので辰・未・戌・丑の季支の生まれは必然的に月柱に華蓋がつく。西遊記の『法身元運逢車力、心正妖邪度脊関』の回で、孫悟空が華蓋についてこんな説明をしている*7

父母生下你来、皆因命犯華蓋、
妨爺剋娘、或是不招姉妹、
才把你捨断了出家。

最初の2句は、「生まれた時に、あなた達全員、華蓋があった」、最後の1句は「それであなた達を出家させた」で間違いない所だろう。
「妨爺剋娘」の「爺」は父親、「娘」は母親を指しているようだ。中野美代子さんは「両親の運勢を妨げたり」と訳している。問題は「或是不招姉妹」で、そのまま「姉妹が育たなかったり」と訳している場合もあれば、中野美代子さんのように「姉妹に婿が来なかったり」と訳している場合もある。

今の所n=1だけど、私の父の一番上の伯父は華蓋のある人で、男の兄弟は8人、女の兄弟は2人でしかも割と早く亡くなったという例があるので「姉妹が育たない」の方じゃないかな、と考えている。

*1:と医・山

*2:釈迦の十大弟子の一人で解空第一、無諍第一、被供養第一とされるスブーティから取られている。

*3:金丹の道ではないということ。

*4:不老不死を求める孫悟空は、どれもが不老不死につながらないと知って嫌だと断るのだけれども、ここで須菩提祖師と悟空との間でちょっとした軽妙なやり取りがある。

*5:しかも『皇極経世書』を読んだ人間が作者として参加してる。→参考

*6:論語為政第二『子曰、学而不思則罔、思而不学則殆。』

*7:原文中國哲學書電子化計劃から拝借した。適宜、日本で通用している文字に直している。