西遊記と皇極経世書
西遊記は玄奘三蔵が仏教の経典を求めてインドまで行ったという史実をベースに作られた『大唐三蔵取経詩話』をコアに、様々な説話が取り入れられて成立したことが判っている。たとえ呉承恩が本当に最終的な編纂者であったとしても*1、呉承恩がゼロベースで『西遊記』を作り上げたわけではない。そんな無名の作者達の中に、邵康節の『皇極経世書』の読者がいたことは間違いない。第一回で孫悟空*2の出生が語られるのだけど、その中にこういう一文がある*3。
蓋聞天地之数、有十二万九千六百歳為一元。将一元分為十二会、乃子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥之十二支也。毎会該一万八百歳。
これは皇極経世書の元・会と一致している。そしてその無名の作者は、
邵康節曰「冬至子之半、天心無改移。一陽初動處、万物未生時。」
と、邵康節の名前を出している。この作者は確実に皇極経世書を読んだことがある。そして、
再五千四百歳、正当寅会、生人、生獣、生禽、正謂天地人、三才定位。故曰、人生於寅。
として、会が寅会から始まることをしめしている。
孫悟空は、東勝神洲傲来国の海にある花果山の山頂にあった仙石が長い時間、天地の精気を受けて生命を孕んで石卵を産み、その石卵から孫悟空が生まれている。孫悟空は卵生だったので姿形は猿であってもヘソは無かったはずだ。で、元になった仙石は、以下のように描かれている。
其石有三丈六尺五寸高、有二丈四尺囲円。
三丈六尺五寸高、按周天三百六十五度、二丈四尺囲円、按政曆二十四気。
上有九竅八孔、按九宮八卦。
つまり、その仙石は高さが3.65丈の高さで、周囲が2.4丈あったとして、これらは天の寸法に適っているというわけだ。中国天文学では周天の広がりを365.25°としている。つまり1日1°で1年の日数を周天の広がりとしているわけで、インド天文学のティティを導入しての360°とは根本的に思想が異なっているといえる。現実主義の中国天文学と理想主義のインド天文学とでも言えるだろうか。
で、仙石の周囲は2.4丈で、これは二十四節季の対応している。これから石の縦横比を計算してみると、横 : 縦=1 : 4.8くらいになる。ずいぶんと縦長な感じだ。
そういえば
今朝の『うらない君とうれない君』で、大石さんが「10年以上前のことを掘り出してさらすと善いよ」みたいなことを言っていたので、やってみることにする。
今月ツイてない人必見!2019年2月後半運勢巻き返し法!【うらない君とうれない君】
2008年8月8日に『知ることは楽しい』と題して、こんなことを書いてた。
邵雍-Wikipediaによると、邵康節は自分自身は儒者でありながらも、陳希夷*4の弟子筋でもあったらしい。Wikipediaに、
とある。梅花心易は、こういった背景があって生み出されたものなのだろう。しかし「康節」が諡とは知らなかった。