ちょっと引っかかった
異能のバトルに人の思いとか色々混ぜ込んであるマンガ『太陽と月の鋼』の著者の松浦だるま先生がこんな tweet(post) してた。
奈良の陰陽師吉川家の史料のことなど、展示(上記画像参照)についてのお話も興味深く、しかし個人的には「晴親、たしか日記を見ると結構な距離を歩いてる時がある」というお話が特によかった…。
— 松浦 だるま (@darumaym) November 4, 2023
公家の当主で陰陽師のボスだから駕籠で移動するイメージがあったけど、歩くのかい晴親… pic.twitter.com/ytQxpGyusI
既にマンガで読んだことのあるシーンだけど、あらためて見てちょっとひっかかった。下のように雷水解の二爻五爻変は沢地萃に之き、晋には之かない。
晋に之くのは下のようにニ爻上爻変の場合だ。
マンガでは父である晴親卿に問われたまだ幼い晴雄卿が以下のように回答しているので、之卦が晋であったことは確実だろう。
之く卦の「晋」も、進み昇る…ゆえに吉卦である。
『太陽と月の鋼(4)』より
晋は上卦の離(火)を太陽とし下卦の坤(地)を大地として、夜が明けて太陽が昇っていく様を表した卦とされる。そして名乗りの『晋』に“すすむ”があるように進むことを表してもいる。晴雄卿の回答にある「進み昇る」は模範解答と言ってもよいだろう。
この父子のやりとりは、
そうなのですか…
— 松浦 だるま (@darumaym) November 5, 2023
ちなみにこちらは、元治2年(慶應元年)冬至に天璋院篤姫に宛てた土御門晴雄の占文案をそのまま引用しております。
ということなので、マンガの登場人物ではなく実在した晴雄卿が誤記した、もしくは翻刻でそうなってしまったかのどちらかだろう。
翻刻は結構大変な作業で、村山修一先生の『日本陰陽道史総説』所収の占事略决の翻刻も安倍泰統の書癖のせいで『騰蛇』が『騰虵』と翻刻されたのが第4版まで続いていた。6版では直ったと記憶している。もっとも村山修一先生の『日本陰陽道史総説』は影響力の強い本なので、最初に出版された岡野玲子さんの『陰陽師』シリーズの第1巻のタイトルは『騰虵』だった。
追記 晴親卿ではなくて晴雄卿の易占でした。申し訳ありません。