雷公式

皇帝専用の式

太乙神数、奇門遁甲六壬神課を総称して『三式』とよぶのは割と知られていると思う。しかし古くは『雷公式』が存在したとされ『四式』とよばれていた時代があった。雷公式は皇帝専用とされ秘密厳守であったため資料はほとんど残っておらず、兵書などにわずかに残っている「雷公殺式曰」といった跋文から推測するしかない存在だった。雷公式のついて最もまとまった資料といえるのは、永楽大典の『小法局式』くらいではないだろうか。

金沢文庫の学芸課長・西岡芳文によると、雷公式とは占術ではなくて六壬式盤を使った調伏法であったようだ。確かに兵書に残る雷公殺式の跋文には、敵を調伏する方法が書かれている。また永楽大典の小法局式では、式盤に呪力を込めるための道教儀礼に則った式盤の作成方法や作成後の御祀りの次第が解説されている。

ただ正しい式盤は材料が厳しく指定されているので、雷公式で調伏するのはまず無理だろう。例えば、式盤の地盤は雷を受けた棗の木を使うことになっているし、天盤は楓*1にできる瘤である楓人を使うことになっている。棗は地のことを知る植物とされていて、それが雷撃を受けることで天地が通じるということなのだろう。楓は天のことを知る植物とされていて、苗族にとってはトーテム的な植物だ*2。余談になるけれども黄帝と戦って敗北した蚩尤だが、蚩尤を拘束できたのは唯一楓を使った枷だったそうで、蚩尤は手枷のまま首を切られたそうだ。蚩尤はそれを恨みに思い、そのため楓は蚩尤の血のごとく紅葉するのだそうだ。

こういった元から呪力のありそうな材料を使って、金泥・銀泥で文字を書き式盤の形を与えた上で御祀りをすることで強力な呪具となる。なお、小法局式によるとお祀りの時の御供えには鹿の干し肉といった生臭ものもあり、調伏用であることがしめされている*3

さて本来は調伏用であった雷公式を改変して、増吉を目的とした上で特殊な材料を使った道具など必要としない式次第を作ってみた。今日4月1日の午前中一杯、特設サイトで公開している。興味のある人はどうぞ。

*1:よく知られているムクロジ科(旧カエデ科)カエデ属のことではなく、フウ科(クロンキスト体系ではマンサク科)フウ属の植物。

*2:ミャオ族-Wikipediaを参照。

*3:道教では最上位の三清様に生臭ものを供えることはありえない。