開光点眼

呪物への魂入

呪物といっても調伏用の道具に限った話じゃない。早い話が位牌とか仏壇とかも開眼供養をしないと本来の役割を発揮しない。この作法は仏教だと開眼、道教だと開光、他にも魂入れとか魂込めとか色々な呼び名がある。実家が檀家になっている御寺の御住職は「御性根を入れる」と言っていた。昨日、twitter の TL に流れてきた「シーサーを起こす作法」もそういうものだろう。ただこれは近年の創作だったようで、それを指摘した tweet を受けて元発言は削除されてしまった。この創作作法は以下の手順だったと思う。

  1. シーサーを塩でこする。
  2. 水洗いする。
  3. 口に酒を注ぐ。
  4. 息を吹きかける。
  5. シーサーを拝む。

1~3はまずは浄化で魂入れの準備段階になる。4が魂入れ作法の本体、5が作法のクロージングと解することができる。魂入れに自分の呼気を使うのは道教で一般的なやり方だと思う。そういえば黒門さんが婚活の開運指導をした男性も吉方から息を吸ってから呼気を剣印に吹きかけていた記憶がある。このシーサーの魂入れ作法は創作だし、1~3はシーサーではなく本来は線香立ての浄化で使われるものだったようだ。そうはいっても、この作法の製作者は、(オープニング)-浄化-魂入れ-クロージングの手順で作法を作ることができる、それなりの素養のある人物じゃないかと思う*1

実は私も以前、祓いの麻鞭を作ったことがある。これは本麻*2を三つ編みにして作った30cmくらいの小さな鞭で、手元に吉祥の御札が付けてある。御札自体は適当で良いらしい。私は五嶽真形図を使った。作り方その他は徳島の御師さんから伝授を受けた。その時に「開眼はどうするんですか」と聞いたら、道教式のシンプルな方法を伝授された。付けた御札を起動するのために魂込めするわけだ。徳島の御師さんは仏弟子なので自分で作った時は仏式に合わせた御札で仏式の開眼供養をしたのだと思う。

昔、何個か作って六壬の生徒さんにプレゼントしたことがある。その時は、徳島の御師さんから教わった開光作法を少し派手目にアレンジして、その場で魂入れしてから渡した。生徒さんの1人が他所の教室で見せびらかしたら、そこの先生に取られてしまったそうで、もう1つ作ったことがある。その取り上げた先生から「効きますね」と言われたことがあるので、験はあったみたいだ。

呪物への魂入れというと、やはり式盤への魂入れを考えてしまう。永楽大典の『小法局式』にある程度まとまった情報があるものの、本質的な情報は皆無に近い。確実なのは、

  • 亥月の壬子から式盤作成を初めて癸亥日までの12日間で作成する。
  • 開けた甲子日に魂入れをする。
  • その作法で降ろす神は三清様とかではない。

くらいだ。供物に生臭物である鹿肉のジャーキーが入っている*3ので、不浄を徹底して嫌う三清様のような上級神ではなくて下級の荒事担当の神なのだろう。

魂込めした式盤は紅い袋に入れて肌身離さず携帯することになっている。占おうと思った時に式盤出してきた天武天皇はちゃんと魂入れした*4式盤を持っていたのではないだろうか。

(おまけ)仏壇で開眼供養が何故必要かはこの動画をどうぞ。


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*1:というのは早計だったようだ。テキトーに色々突っ込んだららしいものができたということのようだ。

*2:ヘンプ

*3:諏訪の神事も喰えない鹿の剥製よりは鹿肉のジャーキーの方が神さん喜ぶんじゃないだろうか。

*4:『醮』が正式名称らしい。