奇妙な用語

十二支の相互関係は、十干の相互関係と比べて複雑で、方合、会、刑、合*1、冲*2、害、破、といったものがある。滴天髄には『刑とか気にすんな』みたいなことが書いてあったりするけれども、刑はやはり重要だと考えている。

韓非子には『二柄』と名付けられた章があり、君主が手放してはいけない2つのハンドルとして『刑』と『徳』の二つが挙げられている。このように徳と刑は古くはセットで考えられていたようだ。

刑には『輪刑』、『朋刑』、『互刑』と『自刑』の4種類がある。『輪刑』は寅−巳−申の孟支の、『朋刑』は丑−戌−未の季支の、『互刑』は子−卯の仲支の関係となっている。輪刑は孟支の関係であり、孟支は季節の長男で十二運の長生の場所であり勢いが強い十二支だ。その勢いによる刑ということで、輪刑には『恃勢刑*3』の別名がある。

ところが輪刑の三支が揃うことを『火の三刑』と呼ぶ人が結構いる*4ということを知ってかなり驚いている。確かにGoogle『火の三刑』を検索するとかなりの数がヒットする。

寅は火の長生で、巳は火の建禄だけれども、申は水の長生でどう考えても火根になるとは思えない。どうしてこんな変な用語が流通しているだろう?非常に不思議だ*5。元々、『刑』は、孟仲季の十二支の三区分から生まれたものなので、西洋占星術とかで、黄道十二宮の中の活動宮のグランド・クロスを『火のグランド・クロス』と呼ぶくらいの違和感がある。

ひょっとしたらどこかで、「ウチの流派の秘伝から生まれた用語だ。」なんて話になるかもしれないけどさ、『刑』みたいな基礎的用語に『ウチの秘伝』とか持ち出すのはダメダメだと思うよ。

*1:支合、六合

*2:

*3:勢いをたのんだ刑

*4:本多信明先生を含めて。

*5:朋刑を『土の刑』と呼ぶのは許容できなくもないけどさ。それでも五行の『土』から何か象を引っ張りだすというのは変な話だろうと思う。