八軒勇吾というロールモデル

今年のマンガ大賞をとった荒川弘著の『銀の匙(Silver Spoon)』は、学歴以外に価値を認めない家庭に育った八軒勇吾が、高校進学で挫折した結果、家から逃げるようにして全寮制の農業高校にやってきて、様々な体験を経て成長して行くという話だ。現在少年サンデーで連載中で、単行本が3巻まで出ている。

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舞台が農業高校なので、主人公の八軒を除くほとんどの生徒が将来は実家を継いで農業へと進む予定であり、また農業についてそれなりの夢と計画を持っている。そんな中で、八軒だけが将来への展望が持てないという状況設定がある。八軒はそのことについて引け目をもっており、そのため周囲から舐められていると感じている。この舐められている感は、対人関係でハッキリと描写されることはないが、対動物、つまり馬術部の馬や八軒が拾ってきた犬との関係では、八軒が動物から舐められていることが描写される。

さて天相星が命宮にあって凶である場合に悪さがどのように出るのか、正直うまくつかめてなかったのだけれども、『銀の匙』を読んでいてピンとくるものがあった。まず天相星のもとに生まれると、どのような人となりとなるかを椎羅さんの『紫微斗数入門』から引用しておく。

あなたは一言で言うといわゆる「世話やき」です。非常に面倒見のいい人で、ある意味で自己犠牲とも思えるような世話のやき方をします。基本的にこの人は、人の喜ぶ顔を見ることが好きなのです。また、自分が何か人のために役立つことを喜びと感じるのです。しかしながら、決して親切の押し売りになるようなことはありません。その結果、多くの人から慕われ、自然とリーダーシップを発揮するようになります。また、困った時にはその友人たちが何かと力になってくれます。

だいたい八軒勇吾そのままだ。八軒が何か行動する場合、ほとんどが無私の行動として描かれている。天相星は天の印鑑係*1であり、無私の星である。そして八軒が『舐められる人』であることを合わせると、天相が悪く出る場合は『舐められる』という形になるわけだ。

なお天相が福徳宮に入って凶の場合も『舐められる』ことになるだろう。この場合、命宮には貪狼星が入ることになる。なので天相星や貪狼星のもとに生まれて、他人からの『舐められている感』に悩んでいる人にとって、八軒勇吾は有効なロールモデルを提供してくれるのではないだろうか。そういえば八軒勇吾も『美味しい』という身体感覚に忠実な人間だった。貪狼の生まれとした方が良いかもしれない。

*1:大石真行さんからそう教わった。