L'estro Armonico

音律と音階の科学

というヴィバルディの曲*1がある。日本では『調和の幻想』という大仰なタイトルで知られているけど、ハーモニーについてのインスピレーションくらいの感じで丁度良いらしい。以前これを枕に『ケプラーの謎』というエントリを挙げたことがある。あの時は漠然とした思いこみみたいものしかなかったけど、玄珠さんが薦めてくれたブルーバックスの『音律と音階の科学―ドレミ…はどのようにして生まれたか』を読んで多くの知見を得ることができた。玄珠さんに感謝する。

西洋音楽では、基本音とその倍音の間を分割して音階を作っている。その原型となったものはピタゴラスによってまとめられたもので、『ピタゴラス音階』と呼ばれている。ピタゴラスは、1本の弦が出す音を基本音としたとき、弦を1対2に内分して得られた、元の弦の2/3の長さの弦が出す、基本音の1.5倍の振動数の音が基本音の協和音であることから出発して、基本音の周波数の1.5n倍した振動数が基本音の倍音よりも高い振動数の場合はその半分の振動数をとるということを繰り返していった。

その結果、1.512/26において、基本音の2.02729倍の振動数を得ることができ、ピタゴラスはこれを基本音の倍音と大雑把にみなすことにした。1.5の冪数が12であることから、これは基本音とその倍音の間を12分割したことになる。この基本音と倍音の間を12分割する方法は、ピタゴラスと同じ時代に中国でも確立されており、中国では弦ではなく管を対象に『三分損益法』が成立している。

中国でこの12分割した音が十二支に対応付けられたように、西洋では十二の音階が黄道十二宮に対応付けられたのではないだろうか。ここまでくれば、西洋占星術の本来の意味でのアスペクトである、サイン間のメジャーなアスペクト、その中のイージーアスペクトが音楽から生み出されたと考えることは、そんなに的外れなものではないだろう。レとファ#はトライン(120度)の関係になるし、レミファ#と奏でるとセクスタイル(60度)が出てくる*2

ではハードなアスペクトはどうだろうか。ざっと計算したところスクウェアな関係では、不協和指数が明らかに0ではないという結果が得られている。また基本音のオポジションの関係にある音は三全音(増4度)に相当する。この2つの音の響きは伝統的に好まれておらず「音楽の悪魔」とまで言われるらしい*3

*1:Googleで検索するまでバッハだと思い込んでた。

*2:玄珠さんから再度の指摘を受けて書きなおした。01/03

*3:Wikipedia-三全音による。