衝(冲、opposition)そして音楽の悪魔

トライトーン


SHISHAMO「明日も」

ちょっと前に私のtwitterのTLにSHISHAMOの『明日も』の転調で使用されているトライトーンをどう感じるかについてのマトメの情報が流れてきた。例えば、

等だ。トライトーンは増四度あるいは減五度に相当していて、不協和音の最たるものとして『音楽の悪魔』ともよばれている。

ピタゴラス音階は元になる音の1.5倍ないし0.75倍の振動数の音を作って行くことで形成される。基底音からその倍音までの振動数に納められた12の音で構成される。ピタゴラス音階と同じものは中国にもあり、基準となる弦もしくは管に対して三分損益法を適用することで作成される。

ピタゴラス音階が12の音で構成される以上、当然のように十二支や黄道十二宮と対応付けられることになる。結果として音の調和は宇宙の調和とつながることになった。孔子は『礼楽』といって音楽を重視したが、それは音の調和と宇宙の調和が結びついていたためだろう。トライトーンとなる2つの音は、十二支や黄道十二宮を円形に配置したとき、衝(冲)やoppositionの関係となって現れる。十二支の輪刑や朋刑はいってみれば特殊なT-squareで、音を鳴らすと当然のように不協和となっている。

また十二支の会やtrineとなっている音は長音階の和音を構成している。もっともピラゴラス音階ではtrineとなっている3つの音全てを同時に鳴らすと音が濁るそうで、grand trine必ずしも吉ならずはこの辺りから来ている可能性が高い。メジャーなアスペクトは図形よりも音楽から説明した方が上手く行くのではないだろうか。ユーラシア大陸の東西で共通の音楽理解があったことが、中国での占星術受容に果たした影響は小さくないと思う。

ピタゴラス音階を作成するために1.5倍の振動数の音を作るということを黄道十二宮間の角度としてとらえると210°の関係となる。これは360°の円周上では150°の関係でもある。これを調和した関係としてとらえるということは現代の西洋占星術ではありえないけれども、占星術が音楽の記憶を無くす前にはあったであろうということは、六壬神課から推測できることではある。六壬の鋳印格の三伝巳-戌-卯や断輪格の三伝卯-戌-巳がそれを物語っている。

余談になるが、二十八宿の昴は牡牛座の一部を構成している。六壬の昴星課では昴=牡牛座=金牛宮(従魁=酉)であり、黄道十二宮金牛宮と星座としての牡牛座が一致していた時代の記憶が六壬には封じ込められていることが判る。いってみれば六壬神課は、占星術の『生きた*1化石』というわけだ。

*1:占術として使えるという意味で。