劉基*1の事跡として中国で最もよく知られているのは「焼餅歌(シャオピングー)」らしい*2。焼餅(シャオピン)は、お焼きの中国版といったところ*3で中華街のどこかでは確実に食べることができるだろう。御嶽神社に行ったときに土産物屋でお焼きを売っているのを見て、焼餅歌の話を思い出した。
焼餅歌ではその予言詩の部分に注目が集まるが、私にはその冒頭に描かれた射覆を劉基がどう解いたかの方が気になる。焼餅歌の冒頭を引用してみる。
明太祖一日身居内殿食燒餅、方啖一口。
内監忽報國師劉基進見。太祖以碗覆之、始召基。
入禮畢。帝問曰。
先生深明數理、可知碗中是何物件。
基乃捏指輪算對曰。
半似日兮半似月。曾被金龍咬一缺。此食物也。
開視果然。
適当に訳してみるとこんな感じか。
ある日、明太祖(朱元璋)は内殿に居て焼餅を食べていた。一口かじったところ、急に内監がやってきて国師劉基が拝謁を望んでいると報告した。太祖はその食べかけの焼餅を碗で覆い隠してその後に劉基を召し出した。劉基の拝礼が終わった後、皇帝はこう言った。「先生は数理*4について深く明るい。この碗の中が何か当てて見せてくれ。」劉基は指をひねって輪にしたりして占った後にこう答えた。「半ばは日に似て半ばは月に似たり。それは金龍がかじって一欠けしています。それは食べ物です。」開けてみればその通りだった。
なんか「半似日兮半似月」の出だしがすごくカコイイ。玄珠さんから聞いたところではこの射覆の占いは梅花心易を使ったものらしいが、六壬鑰では六壬を使ったことになっている*5。多分、「基乃捏指輪算」という描写が六壬の掌訣を連想させることから六壬を使ったと判断したものだろう*6。可能なら占った日時がどう伝わっているか知りたいものだ*7。劉基の子孫である劉廣斌奇門大師の家伝に何かあると面白いが、期待は薄い。
そういえば今年のセンター試験の漢文で劉基の文章が出題されたそうな。via id:yotomusi
現実のところ劉基の著作として確かなものはこういった文章で、占術に関わる書籍はあまり確かではないらしい。