十二宮の原義

中国占術においても西洋占星術のハウスと同じような十二宮を使用する術がある。そういった術で代表的なものとして、七政四餘、紫微斗数、道蔵斗数、六壬推命があげられる。西洋占星術との比較でいうと、中国占術のハウス分割は whole signシステムが基本になっていると考えられる*1

七政四餘は実天体や実天体に基づく感受点を使用する、西洋占星術に非常に近い術で当然とはいえるが、十二宮は反時計回りに、命宮、財帛宮、兄弟宮、田宅宮、子女(男女)宮、奴僕宮、夫妻宮、疾厄宮、遷移宮、官禄宮、福徳宮、父母宮の順でならんでいる。この配置を西洋占星術と比較してみると少し違和感を感じる部分がある。例えば西洋占星術では6室を病気を見るために使用することが多く、同じ6番目に位置する奴僕宮とは異なっているように見える。そこで西洋占星術の古典を少し調べてみた。

http://www.skyscript.co.uk/lilly_houses.html

上記に行くと William Lilly の "Christian Astrology" の抜粋を読むことができ、西洋占星術の古典ではどうだったかを調べることができる。William Lilly は6室の説明を以下のパラグラフで始めている。

It concerneth men and maid-servants, galley slaves, hogs, sheep, goats, hares, conies, all manner of lesser cattle, and profit and loss got thereby; sickness, its quality and cause, principal humour offending, curable or not curable, whether the disease be short or long; day-labourers, tenants, farmers, shepherds, hogherds, neatherds, warreners; and it signifieth uncles, or the father's brothers and sisters.

まんま奴僕宮といっていいだろう。ただ他に小型の家畜や病気も6室の範疇である*2。ただ病気も一応あげてはあるので、中国占術でも病気をみるのに疾厄宮の他に奴僕宮を見る技法が成立するかもしれない。

西洋占星術と全く異なっているのは父母宮と12室で、12室の説明を William Lilly は以下で始めている。

It hath signification of private enemies, of witches......

実は12室をどうあつかうかは中国人も悩んだようで、六壬推命では12室に「相貌宮」を対応させている。意外と父母宮は見直しが必要な宮かもしれない。

他で興味深いのは「兄弟宮」と3室の対応や「遷移宮」と9室の対応で、3室が近距離の旅行、9室が渡航を象意として持っているところから、紫微斗数を方位術として活用する可能性が開けてくる。

*1:西洋占星術においてはハウス分割をどうするかが一つの研究対象として成立しており、中国占術とは大きな違いがある。

*2:家畜は過去において非常に重要だったようで、六壬の古典でも分占に六畜の占が必ずある。ここでの家畜は財産としての家畜であるだろうから、ペットとは異なる範疇ではあるだろう。