先師阿部泰山が最初に出した六壬書は、現在*1、泰山全集16巻に収められている「天文易学六壬神課初学詳解」だが、この乾坤2巻は泰山全集として泰山の著作がまとめられるよりも早く出版された。私が持っている「初学詳解」は奥書では昭和4年に印刷されたものである*2。
泰山全集の六壬書ではその次が10巻の「天文易学六壬神課吉凶正断法」で、私が持っているのは昭和45年印刷となっているから素直に初学詳解と比べると40年以上の差がある。内容的にもかなり異なる部分がある。初学詳解の巻頭の訂正を無視すると初学詳解と吉凶正断法では、
- 貴人の出し方
- 月将の取り方
- 行年の取り方
で大きく異なっている。初学詳解は圓寂坊さん*3や玄珠さんからの話を総合すると「六壬尋原」を底本としているのは間違いない。この六壬尋原にある六壬命理はその後出版された「天文易学六壬神課細密鑑定極秘伝」で解説されているが、玄珠さんによると手抜きが多いそうなので六壬命理に興味のある方は「タオ風水術(購入)」(ISBN:4434047523)を読むべきだろう。玄珠さんが泰山の手抜き*4をちゃんと訂正している。
圓寂坊さんによると泰山はどうも台湾か大陸で師伝の六壬を伝授された可能性が高いとのことだ。吉凶正断法では六壬の勉強を始めるときの儀式の説明や儀式で使用する符が収録されていること、三式の源泉である九天玄女娘々への帰依が説かれていることから見て泰山の六壬はまず間違いなく師伝らしい。また「実践鑑定法」所載の「壬学百断占験」の多くは圓寂坊さんでも出所がわからないものが多く、書籍の勉強だけでは知るはずがないものらしい。例えば指斗法について、その起源が少なくとも太白陰経までさかのぼることが判明したのは極めて最近のことだ。中国の書籍でも解説されていない六壬の技法*5が載せられている泰山の六壬書は中国でもかなり貴重な文献らしい。
憶測を逞しくすると泰山は六壬を伝授される過程で「こんなのもあるぞ」という形で紫微斗数に出会ったのではないだろうか。台湾・香港で紫微斗数がブレイクしたのは最近のことなのに、泰山は第二次大戦以前から紫微斗数を教えていた。