中国正統って何?

透派と武壇

3日の夜は張さん*1の話で盛り上がったのだが、私にとっては張さんと松田隆智さんはペアリングされた存在である。張さんは「中国正統の五術」を、松田隆智さんは「中国正統の武術」をそれぞれ似たような時期に我が国に紹介した。そして2人とも「中国正統って何?」という疑問を残すことになった。張さんの「中国正統五術」については後述するが、松田隆智さんの伝えた中国武術は、実は劉雲樵公が開いた武壇の武術であって、例えば武壇系の八極拳は大陸その他に残る他の八極拳とは風格が異なっている。このことから馬賢達公から通備拳や八極拳を学ばれた野上小達公は、故人となった劉雲樵公の家系まで引き合いに出して論難を加えている*2松田隆智さん御自身は「中国正統」といった覚えはないかもしれないが、男組連載時の少年サンデーにおける紹介では中国正統をウリにしていたはずだ。そして松田隆智さんが伝えた武壇系の武術は武壇の系列では正統であった*3が、中国武術全体を正統に代表するものではなかった*4

同じようなことが張さんの「中国正統透派五術」についてもいえる。透派五術を一般に紹介した最初の書籍である「中国正統五術占い全書」*5のタイトル通り中国正統をウリにしていたが、結局のところ透派において正統であるというに過ぎなかった*6。ただこの中国正統の売り文句の効果は−少なくとも私にとっては−あまりに強烈であった。当時は高校生で*7人の言うことを疑う能力が低かったこともあり、張さんの主張を基本的にはそのまま受け入れてしまった。しかし張さんの作った思考の枠組みは今でも至る所に生き残っているから、あまり疑わなかったのは私だけでもなかったらしい。張さんの残した思考の枠組みで主だったものとしては、

  • 周易は占いじゃない
  • 十干の相互関係(ただし透派によって伝えられた子平、奇門遁甲共通に使用するという例のやつ)
  • 奇門遁甲の立向坐山
  • 十時一局の奇門遁甲
  • 強引な術の分類と分類間でのランク付け
    • 三合派は神殺主体の劣った術
    • 十二支主体の術は十干主体の術に劣る

上記を言う人は口でどんなに透派を否定していても張さんの掌から一歩も出ることができていないといっていいだろう*8。よくて張さんの掌を大きくする手伝いくらいか*9

しかし岳門の方達はある面非常に恵まれている。「周易は占いではない」という張さんの主張を理論的にも実占的にも一蹴することのできる師がいたわけで、張さんの提唱する枠組みが正しくない−こともある−ことを身を以って知ることができたのだから。

八つ当たりの見本

御宗家は八つ当たりの対象にふうちんさんを選んだらしい。ここでもニフ絡みとは、ほんと粘着だね。しかし、私なんかより遙かに人気があるふうちんさんに当ったりすると後が怖いんじゃないかな。

*1:透派十三世掌門人張耀文さん

*2:ただこれはやり過ぎだろう。曹操だって宦官の家の出だ。

*3:劉雲樵公は神槍李書文の関門弟子なのだ。関門弟子というのは最後の弟子ということで、その弟子を最後に門が閉じられたということを意味する。ドアを閉めろという意味の言葉は「関扉」である。

*4:実のところ中国武術はあまりに多様で、中国武術全体を正統に代表できるような門派は存在しないだろう。

*5:最初は文研出版から出た。

*6:もっとも透派の存在自体が怪しいという話まである。

*7:受験勉強よりは占いの方にリソースを割いていた。宿曜経を翻訳しようとしたこともあったっけ。二十八宿を描いた星座速見を作ろうとしたりとか色々やりました。

*8:武田考玄だろうと内藤公であろうと

*9:特に透派の十干の相互関係を無批判にないし独自性を打ち出すために小幅な手直しをして継承している手合いは完全に張さんの掌に乗っている。十干の相互関係の名前だけ変えて目先を変えてる連中も同様。