「えと」という言葉

十二支に対応付けられた十二獣を「えと」と総称する誤用はかなり一般的だが、実のところ「えと」という言葉は十干の陰陽を兄である「え」と弟である「と」で表したことから生まれている。

つまり十干で木行の陽である「甲」を「木の兄」として「きの」と訓じ、木行の陰である「乙」を「木の弟」として「きの」と訓じたことから「えと」という言葉が生まれたわけだ。従って「えと」という言葉で表されるものは、第一義としては十干であるべきだし、どう拡張したところで干支であるべきなのだ。

私の友人で中国占術を専門にしている人達は、「えと」という言葉で十二支を呼ぶことはないし、「干支」をよぶときも「かんし」と音読みで指すことがほとんどだ。いわんや十二支に対応付けられた十二獣を「えと」とよぶことはありえない。

なお十二支と十二獣の対応付けがいったい何時頃、どういう理由で行われたかは定説がない。しかし玄珠さんによれば秦簡日書かなんかには「子の日に入ってきた泥棒は鼠のような顔付きをしている」という、ちょっと笑ってしまいそうな術が出ているそうだ。

ということで、東洋流占術の真髄とかいいながら平気で「えと」という言葉で十二獣を呼んでいるような御仁に中国占術の真髄が理解できているとは思えない。