寺田寅彦

しばらく前の「おれカネゴンさんの日記」寺田寅彦柿の種が取り上げられていたが、「多くの弟子に影響を与えたにもかかわらず、物理学者としては華々しい成果を挙げられなかったらしいと聞くけど」は、ちょっと言いすぎではないだろうか。*1寺田寅彦は、現在ではBragg散乱と呼ばれる結晶格子によるX線散乱の干渉について研究を行い、同様の研究でノーベル賞を受賞したBragg父子と同時期に、X線による結晶構造解析まで到達している。まあこれ一発かもしれないが、かなり華々しい成果だと思う。*2

寺田寅彦はかなり早くから科「学」の限界を熟知しており、「学」に「術」を持ち込むことで限界を越えようとしていたようだ。例えば物理量の時間変化を調べるのに、周波数解析に代えて人間の可聴域に圧縮・伸長した音を聞かせることで、その音色から何かをつかもうと考えていたようだ。しかしこういった試みは、再現性の問題等で「学」の世界からは拒絶されてしまった。現在の「学」でもまだ「術」を取り込むには力不足だろう。

*1:06/17 追記カネゴンさん自身がそう思っているわけではなく、聞いた内容がそうだった、ということである。ちゃんと確認しないで書いてしまってすみません。

*2:学士院恩賜賞でもあるし。