風水についての良書(追加)

田中さんの書評でも取り上げられていたが「東アジア・東南アジアの住文化(購入)」(ISBN:4595236069)は、風水の勉強にとって非常に興味深い本である。本来は放送大学の教材なのだが、東アジアの住宅について研究しようとすると風水は避けて通れないようで、建築の研究者から見た風水についてかなり詳しい記述がある。

中国の四合院、三合院、客家の土楼といった、中国の陽宅風水を生み出す元になった家屋について、詳細な図面付きの解説があり非常に参考になる。中国の家屋は中庭を持つ形態を基本としているようで、大門を外界との唯一のインターフェイスとしている。このような中庭を持つ形態の住居は、日本の住居とは大きく異なっており、風水や奇門遁甲といった中国の風土から生み出された術が、そのまま日本の風土で利用可能かといった問題提起にもなっている。

本書の268ページ以降で取り上げられている、砂漠的思考と森林的思考に基づく住居形態の違いによれば、日本の伝統的な住居は森林的思考に基づいて作られており、中国の四合院や三合院とは決定的に異なっている。つまり日本の伝統的な住居は、限定された外界とのインターフェイスである大門を持っていない。静的環境下では、境界条件が決まると境界内の物理量分布が決定されるので、この違いは非常に大きいだろう。