そこに地理があった

"Guns, Germs and Steel"

ずいぶん前になるけど、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄*1*2山形浩生が翻訳が出る前からすごく褒めてたので、翻訳が出てすぐに買った。

山形はこう書いている。

それをやっちゃったすごい本が、Jared Diamond Guns, Germs and Steel (Norton)(邦訳さっさと出さんかい!)。人間の生存においてなぜユーラシア大陸が有利だったかを論じた本で、それは根本的には、農業に適する作物用植物の種類と家畜化できる大型動物の分布、そしてユーラシア大陸が東西方向にのびているのに対してアメリカ大陸とアフリカが南北方向にのびているのが原因だと論じる。ユーラシアには、そういう作物や家畜になりやすい動植物がたくさんあった。ほかのところにはなかった。さらにユーラシアは横長で、一ヶ所で発見されたものが伝搬しやすかった。南北に長いアフリカやアメリカでは、それがむずかしかった。

東西に長いということは同緯度のエリアつまり気候が似たエリアが広いということだ。

多分だけどユーラシア大陸の東西方向の長さは動植物がその領域を広げて適応拡散して行く過程でも有効だっただろう。
豊富な「作物用植物の種類と家畜化できる大型動物」の存在はユーラシア大陸が東西に長かった結果でもあったと思う。

そしてこの東西方向の長さは農業技術の伝搬には非常に有利に働いただろう。

『天文』が天体観察とそれによる占いの複合体であったように、『地理』もまた地形観察とそれによる占いの複合体だった。今は風水の方が通りが好いけれども、今でも地理を使う人はいる。東西に長いのが吉で南北に長いのは凶、立派に大陸の吉凶が占われている。『銃・病原菌・鉄』は大陸規模の風水を扱った書でもあった。

天に天文、地には地理。

*1:原題: "Guns, Germs and Steel"

*2:kindle版も出てた。→上巻下巻