真冬に怪談

ちょっと思い出した

怪談は、あまりの怖さに結末がなかったりすることがある。故郷の愛媛県の民話にも、そんな話がある。

  1. とある男が夕方、帰路の途中で巨大なドンコを見つけて手取りにする。
  2. 日も暮れた中、家を目指して歩いていると、暗闇から声がする。「ドンコさん、ドンコさん、どこ行くんぞな。」
  3. 背負ったドンコが返答する。「余戸割木で背な炙りに行くんぞな。」

話はここで唐突に終わっている。こういう怪談で話の結末とかが欠落する現象で一番極端なのは『牛の首』だろう。題名と「怖い話だ」しか残ってない*1。私も1つ、結末が欠落して唐突に終わる怖い話を知っている。mixiとかQuoraで書いたことがある話だ。

私の恩師の荒田吉明先生は、フィジカルにもメンタルにも超怖い人だった。先生は夕方、帰宅前にフラリと実験室に現れて「どうかね」とか「どうや」とか学生に声をかけることがあった。実験室では電子ビーム溶接の実験も行われていて、鉄、ステンレス、銅の塊がゴロゴロしていた。

確か4月のある日の夕方、研究室に配属されて間もない4年生が1人で実験室にいた時、先生がやってきていつものように学生に声をかけた。
「どうかね。」
学生が答える。
「いえ、ステンレスです。」

*1:「欠落したんじゃなくて元から無かったんだろう」という突っ込みは重々承知の上だ。