藜の羹
『鬼滅の刃』人気が凄い。連載終了近くからグングン盛り上がって映画公開と共に炸裂した感じだ。映画にも出てくる十二鬼月上弦の参である猗窩座はCVの石田彰が、その戦闘狂の性質を演じ切ったとかで話題になっている。登場人物というか鬼の中でも人気が高い方で色々考察されている。ただ『アカザ』という植物の存在を知った上での考察はあまり無いみたいだ。
アカザは漢字では『藜』と書く。基本、雑草だ。ただ雑草の割にコイツは食える。中国では粗末な食事を『藜の羹』に例えるそうだ。アカザ (植物)-Wikipediaによるとホウレン草の近縁種みたいだ。雑草らしく有毒なシュウ酸を多量に抱え込んでいるので生食は無理らしい。
私が『藜』の存在を知ったのは『聊斎志異*1』の上巻所収の『愛される術(原題:恒娘)』でだった。夫が自分より不細工な妾を入れて、その妾とばかりセックスするのが面白くない主人公が、隣家の奥さんである恒娘*2に愚痴をこぼす。すると恒娘が対応策を出してくれて上手く行ってしまう、という話だ。その対策は5段階で進行する。
- 夫を放置し、自分は夫とセックスしないのを1ヶ月
- 小汚い恰好で過ごすのを1ヶ月(夫とセックスしない)
- 突然のオシャレ(夫とセックスしない)
- 夫が迫ってきたら3回に1回くらいは嫌々セックスするのを半月
- 色気のある表情のトレーニング
どうして上手く行ったのかを問う主人公に恒娘が解説する。
- 妾という存在のアドバンテージは以下の2点に尽きる
- 新しく手に入れたという新規性
- 正妻に気遣って頻繁にはセックスできないという希少性
そこで対策として、
- 普段、夫の好きにさせることで妾の新規性と希少性の両方を棄損する。
- 普段、夫の眼中に無い状況を作り出して新規性を再度獲得する。
- 夫の思うようにセックスさせないことで希少性を獲得する。
が出てくる。これに色気*3が加われば万全というわけだ。この解説の中で恒娘がこう語っている。
放ったらかしといて、思う存分にさせとけば、甘いもんだっていやになってしまうわ。
まして藜のお吸物なんかね!
『藜のお吸物』は十中八九は『藜の羹』だろう。で、この解説の後、二人は「閨中の密友」になったそうなので、まぁ百合ったんだよね。
ということで、猗窩座について考察するなら雑草のアカザから出発した方が良いと思うよ。