空気投げ

柔道の三船十段の得意技に空気投げがあった。相手に触れたか触れないかのうちに技が決まることから空気投げと呼ばれたが、正しい技名を「隅落し」という。前回のシドニーオリンピックの優勝戦で野村選手が決めた技がこの隅落しだった。*1

少し前所用で鎗田道場を訪問したとき、偶然この隅落しの稽古を見学することができた。技を掛けるほうが膝をついた状態で、掛けられる方の手首あたりをスッと引いたとたんに技が決まって相手が倒れてしまう。お弟子さんの中には入門して半年も経たないような人がいるのだが、全員が隅落としを決めて行く。

もっとも私が見た隅落しは最も簡単なものらしいが、それでも隅落しというとショックを受ける。合気道に残っている伝承では、三船十段は隅落しの変化の一つである天地投げを見て自得したとのことだった。同じ術でも武術と占術では上達過程に差がありすぎると改めて思った。

*1:どこかのWebに「三船十段は自分にしかできない隅落しを政治力を駆使して講道館に決め技として認知させた」とあったが、この試合で明確に否定された。