天保新選永代大雑書萬暦大成

という本がある。私が持っているのはかなり昔に神宮館から出版されたもので、大阪大学在学中に心斎橋の中尾書店で購入した記憶がある。なんか調べてみたらAmazonのマーケットプレイスで購入できるらしい。内容は江戸時代*1の天文・地理・暦・占い・マジナイのごった煮で「大雑書」の名に恥じないものになっている。オリジナルは手書き文字から版木を起こしたものだけど、それを翻刻して活字化*2してあり、文字が判読できなくて困ることはない。文章も江戸後期に書かれたものなので、夏目漱石を読むことができる人なら割とスラスラ読むことができるだろう。

また『壬時の占ひ』という名前で『小六壬』が、小六壬から生まれた、日取りの吉凶を見るのに使用されている『六輝』が『六曜星日取り考』として両方記載されている。このことから六輝の成立の下限が限定されることになり、「永代大雑書」には歴史的な資料としての価値もそれなりにある。なお『小六壬』については、この「はてな日記」でも少し触れたことがある。→六壬課時と六輝

で、漱石を読むのも辛いという現代人向けに「永代大雑書」から占いとマジナイの部分を抜き出してチャラくリライトした本が、主婦と生活社から昨年出版されたそうだ。本多信明先生が紹介していた「秘伝江戸の占いとおまじない」という本で、当然のようにAmazonで購入できる。本の紹介の文章が、

江戸時代の生活大百科『永代大雑書』から占いとおまじないを超訳

となっていて、もう『超訳』というところがチャラさを感じさせてくれる。まあチャラい方が読みやすくて好きだという人は別にして、「秘伝江戸の占いとおまじない」しか知らない人は是非とも元ネタの「天保新選永代大雑書万暦大成」を手に取って欲しい。

*1:天保新選なんで江戸時代の大部分はカバーしてそうだ。

*2:といっても今はさすがに電子化されているだろうけど。