湊神社
実家の近くに湊神社がある。私が幼い頃は『オイベッサン』とよんでいた。てっきり恵比寿神社と思い込んでいたけど、実家から見た方位を計算するためにGoogle Mapを見ていたら、湊神社が正式名称だった。最近は埋め立てのせいで海からは離れてしまったけど、昔はすぐ前に浜が広がっていた。鳥居の前の堤防はその名残だ。
明治42年に伊予灘に迷い込んだマッコウ鯨が郡中沖に住み着き漁ができなくなった。そこで地元漁民が手を尽くしたものの結局は手に負えず、下関の捕鯨会社に依頼して捕鯨を行ったそうで、翌明治43年に鯨の供養として「克鯨一字一石塔」が湊神社に建てられた。
占い絡みで余計な話をするけど『克鯨』の『克』は戦って勝つことを意味する文字で、名乗りでは“カツ”の訓を持っている。五行の相生相尅の『尅』や『剋』は、『克』に刃物を意味する『寸』や『刂』を加えた文字で戦いをより強調している。
私は湊神社を『オイベッサン』とよんでいたので祭神は恵比寿様と疑いもしなかったけど、愛媛県神社庁によると祭神は事代主命と菅原道真公だそうでオッ魂ゲ*1。そして湊神社の前の浜は私にとってはただの『浜』だったんだけど『恵比寿の浜』という名前があったらしい。撃取られたマッコウ鯨は『恵比寿の浜』に引き上げられて見世物になったそうだ。
愛媛県には南予の方に鯨の供養塔が幾つかあるけれども、みんな打ち上げられた死骸の御蔭で飢えから救われたという話*2で、いい鯨は死んだ鯨だけらしい。
湊神社は社殿を御守りするのが狛犬ではなくて恵比寿・大黒となっている。悲しいことに恵比須様の釣り竿が失われている。
考えてみたら御祭神が外に出て社殿を護っているハズがないか。
拝殿はこんな感じ。本殿は拝殿のすぐ後ろにある。
拝殿の中には捕鯨を描いた額が奉納されている。
twitterでフォローしている幣束さんがこんなtweetをしていたので色々思い出した。
各地の海辺に、寄鯨の食肉やその利用で豊かになった話がある。この国の海辺の民は、浜に寄り着く珍奇なモノ、貴重なモノを恵比寿と呼んだ。寄鯨は恵比寿そのものであったろう。
— 幣束 (@goshuinchou) July 15, 2020
北海道室蘭の室蘭八幡宮は寄鯨の富によって社殿を建て、それに感謝する鯨の神楽「鯨神の舞」がある。死ぬ前に見に行きたい pic.twitter.com/3ws5ePfSK6