愚か者の話をしよう

雨が降ってる

PSYCHO-PASSシリーズの3と4の“FIRST INSPECTOR”は慎導灼(しんどう-あらた)と炯(けい)・ミハイル・イグナトフという新しい主人公を迎えて、シビュラの盲点を突いて暗躍する犯罪システムと公安局との闘いを描いている。ラスボスの設定がシーズン1では槙島聖護という個人、シーズン2では人格の複合体ときて、今度はシステムという構成になっている。Amazonでの評価は割と低いけど私にはそれなりに面白かった。

主人公の慎導灼にはメンタル・トレースという特技がある。五感の全てを動員して周囲の状況を補足し、それを初期条件として過去そこにいた人間の行動をトレースするという特技*1だ。メンタル・トレースを行う時には、ホワイト・ノイズを聴きながら“雨が降ってる”という言葉をトリガにして意識の中を『潜る』。潜ることで、直接なイメージとして標的の行動をトレースすることができる。

瞑想系のトレーニングをしたことがある人なら、意識の中を潜るのが割と危険ということを、師匠ないし先輩から散々聞かされたことだろう。アニメの中でも相棒の炯・イグナトフが命綱を握っていてヤヴァいと感じたら灼を現実に引き戻す役目を担っている。そして灼の父である慎導篤志は幼い灼に『アンテザード』にはなるなと警告している。『アンテザード』は“untethered diver”のことで、命綱無しのダイバーを意味している。

まぁ師匠とかバディが握る命綱無しで意識の中を潜るなんて愚か者としか言いようがないよね。そして35年くらい前の私は、その愚か者だった。

当時、博論のまとめに着手していた私は、上手くまとめることができず手掛かりを求めて焦っていたし不安にさいなまれてもいた*2。で、その状況を脱出しようと、覚えたばかりの瞑想のテクニックを応用して、無意識に直接接触して気力その他を無意識から汲み上げようとしたわけだ*3

意識が追い詰められているときは無意識はもっと追い詰められている、なんて当たり前のことすら理解してなかったというていたらく。私はもっと焦ったし不安になったし、現実感覚が薄くなるというオマケまであった。私の状況に親が泣いた時もボンヤリしていたように思う。何年かして何とか社会復帰ができた。配偶者がいるということも大きかったと思う。愚か者の愚かさには底がない。

こういう愚かな体験をしたので鬱になった時も瞑想系のテクニックは使わなかった。そういえばNIFTYで見かけた独学系の魔術修行者とかも冷めた目で見ていたね*4

雨はやんだ。

*1:かなりチート。

*2:最近は違うけど、以前はこの焦燥感と不安感にさいなまれる大学時代の夢を見ることが時々あった。

*3:今、振り返ると、やっぱり逃げていたんだよね。

*4:危ない目に逢ってないというのは無難な所止まりだし、危ない所に到達していたらニフに出てくることなんてできないだろ、くらいに思ってた。