最近、易経本文からmonogramとかbigramを作って、それぞれの出現頻度あたりの統計情報を抽出するということをやっていた。統計情報から易経が本来持っていた性格がどのようなものだったかについての大枠が決まるなら面白いと思ったわけだ。
ところが昨日2chで*1『善く易を為むる者は占わず』の出所が「荀子」だと教えてくれた人がいた*2ので、ちょっとGoogleで検索をかけてみると、「荀子」の「大略篇」にある文言らしい。そこでさらに『荀子+大略篇』で検索してみると、以下を見つけることができた。
東京大学文学部・大学院人文社会系研究科
2008年度博士論文
元勇準著「『周易』の儒教経典化研究−出土資料『周易』を中心に−」
である。この論文は『周易』が本来どのようなものであったかが豊富な出土資料から考察されている*3。そして第一章で考察されているのが
第一章では、出土資料『周易』の形状・卦画・卦名を考察し、前漢以前の『周易』の姿はいかなるものであったかを明らかにした。そして、『周易』を戦国時代の占筮記録と比較考察することによって、『周易』が占筮記録を総合・整理した書物であることを論証した。
と、まさに私が統計情報から大枠を決めようとしていたことが、出土資料の比較からダイレクトかつ詳細に研究されている。可能ならこの論文を取り寄せて読んでみたいものだ。なお、この論文によると『善く易を為むる者は占わず』は後世の挿入らしく、本来の『荀子』にはなかったらしい。
まあ、こういうちゃんとした研究の前では『周易-Wikipedia』から除去した『徐世大の周易解釈』とか『張明澄の周易解釈』とかは、珍説・奇説の類でしかないだろう。しかし元勇準博士の研究は貴重なものではあるけど、今のようなネットワークがなければその存在を知る者すら稀少であっただろう。そういった意味で、加藤大岳が活躍していた時代と比べて遙かに便利な時代になったものだ。