カルト

白蓮教

中学、高校の頃に聊斎志異を何度も読んだが、中にいくつか、白蓮教を取り上げた回がある。白蓮教というのは、中国における仏教系のカルト一般を指す言葉のようだ。危険術や幻術の類を得意としたようで、それらを使って信者を集めた結果、一部は反乱軍を組織して実際に反乱を起した。元末の紅巾党の乱は、白蓮教の反乱としては最大の成功を収めており、白蓮教の信徒の中から、明の太祖である朱元璋が出現している。*1

白蓮教の起源は南宋の頃のようで、諸星大二郎の諸怪志異の3巻に出てくる「喫菜事魔」はひょっとすると白蓮教の起源なかもしれない。信徒が夜集まって男女を問わず一所で過ごして、夜明けととも解散するところが、喫菜事魔と白蓮教でよく似ている。また諸怪志異の3巻は、水滸伝時代を背景としているが、梁山泊の豪傑達は紅巾を身に付けていたようで、このあたりも白蓮教と共通点がある。

ようは、反社会的とみなされた仏教カルトの呼称*2として、白蓮教があるらしい。オウム真理教も白蓮教の類と見ていいだろう。東アジア歴史的な視点に立つと、オウム真理教はそんなに特異な存在でもなさそうだ。

なおオウム真理教のような特徴*3を持った集団としては、日本国内に限っても、大本教という先達がある。出口王仁三郎の布教によって、知識人とされる人達もかなり参加し、また昭和神聖会というヒトラーユーゲントのような組織まで作られていた。当時はまだ国家暴力をふるうことについての制限が小さく、第一次、第二次大本事件を通じて大本教を叩き潰してしまったが、放置されていた場合に、大本教国家に対して無害な存在に留まっていた保障はない。*4

たしかに、サリンという大量破壊兵器を使ったカルトオウム真理教が最初だったかも知れないが*5、危険なカルトという点ではオウム真理教はそんなに珍しい存在ではない。*6従って亜流*7はいくらでも出てくるだろうし*8オウム真理教よりも成功したカルト*9だっているわけだ。

危険なカルトに対して有効な対策は?

では、普通の人間がカルトに対して何も対策しなくていいのか?全て警察に任せておけばいいのか?というと、やはり個人個人で自己防衛した方がいいのは間違いないだろう。

基本的にカルトの教義には、大きな嘘が含まれているから、それを見抜く鑑識眼を身に付けるところから始めるのがいいのではないだろうか。

悪相の小男が「私は仏陀の生まれ変わりのナントカだ」といったら、「仏陀というのは、この世に絶望したために輪廻からの脱出を真剣に考え、見出した脱出方法を実行した結果、脱出に成功した人で、仏陀が生まれ変わったら仏陀じゃない。」と、嘘をすぐに指摘するとか、

「大宇宙占星術であなたの宿命は御見通しだ」とほざくヤシがいれば、「ああ、四柱推命の出来損ないね」と、手の内が見えるとか、

法華経が最高の経典と天台智義が五時教判で明らかにした」と、現代になっても言い続けるヤシには、「そんなものはとっくに否定されてるぜ。岩波文庫法華経上巻の後書でも読めヴァカ。」と教えてあげるとか、

そういった鑑識眼を個人個人で身に付けていくところから始めるしかないのでは。

一審では、予想通り死刑判決が出た。

参考のために危険術の紹介

危険術は、術者が己の神通力を証明してみせると称して、普通の人間ではできないような、ちょっと危険なことをしてみせるパフォーマンスである。そのほとんどは安全に行うための原理があり、誰でもある程度のトレーニングを積むとできるようになる。

  • 刃渡り(難度高)
    鋭い刃物の上にのって動き回っても足が切れることはない、というものだが、これは刃物に身体を押し当ててもそのままでは切れない、刃物は刃筋にそって押すか引くかしないと切れないという原理に基づいている。ただしかなり危険なので、よいこは絶対にやらないように。
  • 火渡り(難度高)
    火を燃やした後の熾きの上を素足で歩く、というもので、原理は知らないのだが、練習すると夏の海岸の石の上を歩くよりは楽チンらしい。*10
  • ガラスの破片の上を歩く
    前もって歩く場所を決めておいて、その場所のガラス片が動かないように、木槌かなんかで叩いて締めておく、というのが原理。ナポレオンズがテレビでやっていた。
  • 画鋲つぶし
    手のひらで針を上にした画鋲を叩き潰す、というもので、掌が意外と硬いことを利用している。掌で数回硬いところを叩いて、掌を引き締めておいてから、画鋲を叩くのがコツらしい。
  • 沸騰する油に手を入れる
    一番楽チンな方法として、低沸点で油よりも比重が高くて油と分離する液体を使う方法がある。よく酢が使われるらしい。酢をなべにいれ、その上に油を注いで火にかけると、酢が沸騰して油が沸騰しているように見えるが、酢はかなり低温で沸騰するので手を入れても火傷しない。*11

*1:もっとも、朱元璋は明の建国後には、白蓮教を禁止している。

*2:法輪功も白蓮教の一種とみなされているようだ。

*3:派手なパフォーマンス、知識人からの認知、知識人層からの参加、ある種の終末思想を背景とする。

*4:ま、第二次大戦に突き進んだという点では、国家そのものが有害だったといえるだろうけど。

*5:玄珠さんから、「宗教を背景に持ち、大量破壊兵器を使用して、殺戮を行った集団として、USAネオコンは無視できないんじゃないか」、「殺戮の規模ではネオコンの方が遥かに上」との指摘をもらった。そうかもしれない。2/29追記

*6:そのあまりに即物的な性格を含めて(圏外からのひとことさんより)。基本的にヤツラの得意は、病気治しとか危険術とか、トリックを使って儲けさせてもらったと信じ込ませる技術なわけで、即物的なのは割と共通していると思う。

*7:例えば、悪徳不動産屋の雰囲気をまとう背の低いアイツが教主のあそことか。

*8:もっとも少し調べてみたところでは、第八運以降は白蓮教の事件はあまりなさそうだが。

*9:連立与党として政権の中枢にいたりする。

*10:修験者だった祖父はそう言ってたそうな。

*11:酢の臭いをどうごまかすかはネタ本に書いてなかった。