白中煞

『陰陽方位便覧』と『三白寶海』

『陰陽方位便覧』の上巻こうある

三白寶海ニ曰五性命ノ人須ラク白中ノ煞ヲ忌ベシ
金命ノ人ハ九紫ノ火ヲ忌ベシ
木命ノ人ハ六白ノ金ヲ忌ベシ
水命ノ人ハ八白ノ土ヲ忌ベシ
火命ノ人ハ一白ノ水ヲ忌ベシ
コレ皆三白吉星ヲ取テコレヲ論ズ
即三白吉ナレドモ不可ナルトキハ命ヲ尅ス
況二黒五黄三碧四緑七赤ヲヤト云々
三才發秘ニ曰世人洛書ヲ用ユルニ
唯紫白ヲ求メテ吉トシ
黒緑ヲ煞トス
殊ニ白モ又能煞ヲナシ緑モ亦能吉ヲナス
總テ生尅ニ從フテ取
用ユルコトヲ知ザルト按ズルニ
九星惟柴白ヲ取テ吉トスルコトハ奇門家に始ル
然レドモ柴白モ吾命ヲ尅スル時ハ禍ヲ致*1
黒緑等モ我命ヲ生ズルトキハ福ヲ致ス
宜シク其生尅ヲ察テ吉凶ヲ断ズベシ

改行を適宜付加した。出だしに「三白寶海ニ曰」とあり「白中ノ煞ヲ忌ベシ」と続くので、三白寶海*2で白中煞を探してみると『白中殺图』という項というか表があり*3、表の前に以下の記述がある。

凡修造必先遁柴白到其方、更須有気則福重、無気減福。
又當避入墓等殺、所謂白中有殺少人知。

文字を日本で通用する文字に改め句読点を適宜付加した。たったこれだけだ。五行の生尅とか出てこない。続く図というか表はこんな感じだ。

表.白中殺の位置.
九紫一白二黒三碧四緑五黄六白七赤八白
六捷殺
暗建殺
受尅殺 坤中
震巽 乾兌 乾兌 震巽 震巽
穿心殺
交劍殺
闘牛殺 震巽 震巽 震巽 震巽 震巽

ということで、ということで『陰陽方位便覧』で陰陽五要奇書の『三白寶海』は権威付けの典拠としてしか使われてないことがわかる。そして陰陽五要奇書が本来は風水書であったことは考慮の外だった。なので九星方位術の書籍として刊行された最も古い書籍は『陰陽方位便覧』であって、それに出て来る典籍は読む必要は無いくらいに考えておいて良さそうだ。

なお余談だけど白中殺図の暗建殺は一白が坎宮の時に暗建殺ということで、中宮五黄の伏吟が暗建殺ということになる。今の暗剣殺はそれを読み替えて中宮の星の定位を暗剣殺としている。つまり五黄の反対が暗剣殺というのは後世の説明であって、中宮の星の定位に乗り込んで来る星は何でも暗剣殺というのが本来の考え方なのだろう。

それと三白九紫を吉とするのは「奇門家に始ル」ということで、著者の白井為賀やその師匠達、ひいては土御門晴親は奇門遁甲の3吉門と景門が定位が同じ三白九紫を吉とすることの起源であることは知っていたわけだ。これは今でも「八八発財、六六大順」として生き残っていて、中国人は数字の6と8を好んでいる。6は六白で開門、8は八白で生門に通じている*4

*1:多分、この文字。

*2:李峰注解『阴阳五要奇书中册』、海南出版社2017、5刷

*3:566頁

*4:参考→『八八発財、六六大順