とりあえず目を通した
斉政館から出版された『陰陽方位便覧』は繰り返し再版されている。国会図書館のデジタル・アーカイブに明治23年に出版された『陰陽方位便覧(上中下)』があったので目を通した。
やはりこれが近世以降の九星術のネタ本ぽい。上巻の29コマに、こうある。
三白寶海ニ曰五生命ノ人須ラク白中ノ煞ヲ忌ベシ
とあって、三白九紫は本来は吉星なんだけれども、自分の星を尅する場合は三白九紫の方位を忌むとある。つまり吉星でも煞は忌むので、そうでない星はなおさらという感じで、
- 一白生まれは、二黒、五黄、八白が凶
- 二黒生まれは、三碧、四緑が凶
- 三碧生まれは、六白、七赤が凶
- 四緑生まれは、六白、七赤が凶
- 五黄生まれは、三碧、四緑が凶
- 六白生まれは、九紫が凶
- 七赤生まれは、九紫が凶
- 八白生まれは、三碧、四緑が凶
- 九紫生まれは、一白が凶
となっている。また自分の星を生じる五行の星は吉であるという説明がそれに続く。
十中八九は『陰陽方位便覧』が今の九星の直接のルーツと言って良いだろう。
面白いのが、38コマ以降で解説されている『干支本命的殺』で、
- 生年干支が本命
- 年干支、または月建干支を中宮において干支を飛泊させた時、本命干支の吊宮が的殺
という干支九星のルーツでもあることが分かる。
更に面白いのが8コマの『凡例』で、八宅の本命卦と本命九星は全く異なるものとして、方位で八宅の本命卦を使うのは間違いであると断じていることだ。
八宅明鏡ニハ男女命星ニ差別ヲナシ生氣延年天醫等ノ名目ヲ配當シ東命西命ヲ分チ定メ以テ家宅ノ備ヘ立ルコトヲ説是故二俗以為惟建築ノ法ニヲイテコレヲ用ユルノ外餘關ルコトナシ是甚シキ誤リナリ
既に江戸の頃から八宅の理気と方位選択の違いが論じられていたことになる。日本人が八宅を知らないわけではなかったということだ。