六壬占選将

壇ノ浦の戦いをめぐって

NHK大河ドラマの『鎌倉殿の13人』も壇ノ浦の戦いが終わった。源平の決戦をめぐってtwitterのタイムラインがにぎやかだ。話題の中心は義経と演者の菅田将暉さんだ。海中に没して見つからなかった草薙剣についての安倍泰茂卿の六壬占についての考察を書いたことのある人間としては、義経を総大将としたのは明らかに人選ミスだと思う。この戦いで義経が指示された目標は、

  1. 三種の神器の確保
  2. 安徳天皇の身柄の確保

であり、2が無理でも1は達成しなければならない目標だった。この目標が達成されていさいすれば、戦での勝敗は関係なかったはずだ。
にも関わらず義経は勝利を第1目標において、安徳天皇の入水と神器の水没という失態を犯すことになった。勾玉と鏡は幸いにも回収できたけれども、安徳天皇と共に入水した二位尼が腰にさした剣は見つからなかった。

つまり義経は戦闘指揮官としては優れていたのだけれども、鎌倉にいる頼朝の意を汲んで戦略目標に忠実な作戦を立てるべき総司令官としては不適格だったということだ。

六壬神課の占選将において、派遣軍総司令官の類神*1を太常とする。多分、太常の本地の小吉でも良いだろう。太常や小吉の象のコアは社稷*2と、今の所は考えている。土地神を祀る『社』、穀物神を祀る『稷』を合わせた国家の基盤が『社稷』だ。太常や小吉は王の代理人としての派遣軍総司令官の類神にふさわしい。義経だと勾陳か白虎という所で太常ではない。

七惑星において王は太陽であり、月は王妃を別にするなら皇太子とか宰相ということになる。月は巨蟹宮のルーラであり、黄道十二神の小吉は巨蟹宮に対応している。そういう存在としての派遣軍総司令官はやはり太常や小吉になるだろう。

余談だけど太常は太裳と書かれることもあり、裳=スカートから女性的なイメージがある。しかし平時は社稷であり戦争という状況では派遣軍総司令官となる。この辺りは西洋占星術巨蟹宮六壬の小吉でイメージに齟齬があると思っている。他にも大衝と天蝎宮とか六壬と西洋占星術でのイメージの食い違いは色々ある。六壬と西洋占星術は別物だからいいじゃんという考えでも良いとは思うけれども、イメージを擦り合わせて統一することも象を錬る一助にはなると思う。

*1:ホラリーなら“significator”。

*2:マンガ『蒼天航路』で社稷を解説する曹操がメッチャ恰好好かった。