四柱推命学極意秘密皆伝

この本から始まった

山伏だった祖父とは面識がなかったが、祖父の33回忌の時に遺品の中から藤井佐兵衛商店*1から郵便で来た阿部泰山の出版案内を見て問い合わせの手紙を書いたのが、占術研究にのめり込む切っ掛けだった。返信では「問い合わせの書籍は既に絶版だが、京都書院から出ている泰山全集に収録されている。そちらに問い合わせて欲しい。」ということで、泰山全集で最初に入手したのが、17巻『四柱推命学極意秘密皆伝』と16巻『天文易学六壬神課初学詳解』*2の2冊だった。

四柱推命学極意秘密皆伝』は藤井文政堂から上梓した天地人の3巻をまとめて1冊にしたもので泰山全集の前に書かれた本だ。泰山全集で解説された四柱推命のエッセンスが詰め込まれている。泰山全集の中の全書といった趣がある。中学時代に貪るように読んだ。私の四柱推命の骨格は『四柱推命学極意秘密皆伝』で形作られたといって良いだろう。

この本で泰山は、通変に固有の吉凶を求めるのは少々古いとしている。そして通変の吉凶は身の強弱で変化することを説いている。扶抑という言葉こそ出てこないものの、明らかに扶抑を論じている。
なので透派子平と出会った時も、格局の吉凶を身の強弱で定めて、その扶抑で喜忌を決めるというのに全く抵抗が無かったのを記憶している*3

具体的に例を挙げてみる。『四柱推命学極意秘密皆伝』の天の126頁には、

三、身旺か身弱か、通変星の喜忌を定める。
四、四柱五行の大過であるか不及するか中和して居るかすべて輕重を視*4る。

とある。扶抑の話なのは間違いないだろう。今回、ザっと全集を見返してみたけれども、調候で十干の喜忌を論じているのは『欄江網』を解説した6巻『四柱推命学調候用神大法』くらいなもんだった。なお『四柱推命学極意秘密皆伝』で扶抑の次に重要視されているのは命式の清濁だと思う。以上が私が泰山全集の四柱推命についての印象なんだけど、どうも世間じゃ違うらしい。

というのが、泰山流の武部泰莞先生がアメブロの『阿部泰山全集について』のエントリで、こんなことを書かれていたからだ。

現在の泰山流の四柱推命を学んでいるわけですが、阿部泰山全集に書かれている内容は現在のものとは大きく異なるものです。

例えば、阿部泰山先生の用神は扶抑の視点を欠く、ある意味純粋に調候用神重視のものです。

また、財官印、つまりお金と名誉と先祖の徳があれば良いという考えが散見される等、先生本人の中で体系化がなされていないのではないかと思われるところもあります。

私の場合独学だし、読み方が変なのかもしれない。

命式の清濁

お恥ずかしいことに今の段階では命式の清濁がちゃんと理解できてない。『四柱推命学極意秘密皆伝』を読み返していて発見があった。
官殺混雑という、正官と偏官の両方が出ている命式は凶命として知られている。『四柱推命学極意秘密皆伝』では官殺混雑を濁として、食神で偏官を尅す、もしくは正官を傷官で尅すことで混雑の害を除くことができるとしている。つまり濁から清になったというわけだ。清濁の理解が少し進んだ気がする。

昔は理解できなくて読み飛ばしていたのだと思う。今は少し理解できるようになったので読むことができたのだろう。

*1:山城屋文政堂藤井佐兵衛あるいは藤井文政堂だったかもしれない。

*2:この本で初めて六壬に出会った。面白い術だけど、時刻で立課する占術が本当に使い物になるのか?が第1印象だった。

*3:扶抑って用語があるんだ、便利だな、と思った。

*4:古い字体だったがグリフが無いので現行のグリフを使用した。