占事略决とは

占事略决を通読しての印象

8月20日福山リビング新聞社の「リビングカルチャー倶楽部」で行われた『安倍晴明〝希代の陰陽師〟の経歴』を受講してきたのだけど、晴明の著作である『占事略决』について、講師の木下琢啓先生が私を気にしてちょっと歯切れが悪かったので、私の『占事略决』への印象を書いておく。

安倍晴明が『占事略决』を書いたのは、もちろん家業としての陰陽師に必要な六壬式占の知識を子孫に伝えるためだったのは間違いない。そして『占事略决』が簡略に書かれているのは表題通り間違いない。通読するには六壬の他の古典から補って読む必要があった。

そして『占事略决』には安倍家における家伝を背景に、術の伝位*1でいう目録*2的な意味合いがあったのではないかと推測させる記述が幾つかある。例えば「十二客法第廿」では、

又有范蠡十三人法省不載。
(大意)また范蠡の十三人法があるが省いて載せなかった。

「三十六卦大例所主法第廿六」の末尾に、

右三十六卦及九用次第、家々之説各不同。又有卅五卦、六十四卦法、或一卦之下管載数名、或一卦之内挙多説然、而事繁多煩省、而不載。具存本経、以智可覧之。
(大意)右の三十六卦および九つの三伝の出し方は、家ごとに異なっている。また三十五卦や六十四卦の場合もある。あるいは一つの卦にいくつかの卦をまとめてある場合や一つの卦に対して多数の説があげてある場合もあり、これら異説については煩雑なので記載を省略した。ここでは知っておくべき卦をあげている。

これらの「不載(ここでは記載を省いた)」は、不載した部分について安倍家内では伝授が行われていたのではないかと推測している。つまり『占事略决』の伝授とは、伝位でいう目録的な意味合いであっただろう、というのが現時点での私の推測だ。