無理もない

再度『北斗の拳

昔々*1Office HOKUTOに『北斗の拳と占い』というコラムをあげたことがある。あのマンガが連載されていたのは私がD1かD2の頃だったろうか?マンガに北斗、南斗とか五車といった言葉が出てくることから、原作者の武論尊さんには、確実に西川満先生の算命についての知識があることがわかる。

ところで天帝の近衛である元斗皇拳の伝承者は紫のオーラを纏うことになっている。そして星の世界の天帝である北極星には紫微星の別名があり、北極星の周囲は『紫微垣』とよばれている。なので、武論尊さんには中国天文学ないし占術の紫微斗数について、ある程度の知識があるのだろう。

北極星を含む小熊座の一部が小さな柄杓形に並んでいるので、英語圏で“Little Dipper”と呼ばれることもある。元斗はこれのことだと言えるだろう。“little”があれば“big”があるのは当然で、北斗七星がその“Big Dipper”だ。じゃあ南斗はといえば星座の射手座の一部の6つの星がこれまた柄杓状に並んでいる。これが中国では二十八宿の斗宿で、南斗六星ともよばれている*2

ということなのでid:wattoさんの昨日のエントリに、

いらんこと言いを重ねると、オールドマンガファンとして往年の人気マンガ『北斗の拳』を念頭に置いてのことだが、「北斗」というのは「北のひしゃく」という意味でおおぐま座の七つ星がひしゃくの形に似ていることから命名されたものであり、南半球にそのような形をした星座はないからあのマンガに出てくる「南斗」というのは本来ナンセンスなのである。

と、あったので、早速「南斗ってあるよ」というコメントを付けさせてもらった*3

でもこういう勘違いは仕方がないと思う。『北斗の拳』で南斗聖拳のシンが使っている紋章はブラッディークロスだし、さらったユリアのために作った街がサザンクロスだし、続編にあたる『蒼天の拳』には南斗極十字聖拳が南斗聖拳の源流として出てくる。なので武論尊さんが南斗から南十字星を連想するように誘導しているのは間違いないところだ。

ところで北斗七星の柄の三星である、武曲、廉貞、破軍は古来から軍事と係わっていて死の星だった。後に北斗七星全体が死の星座となる。北斗神拳暗殺拳なのはこんなところから来ているのだろう。また北斗が死の星座ということになると、バランスを取るように南斗は生の星座となっている。ということで、北斗神拳が陰であり南斗聖拳が陽なのは、北斗南斗の役割分担からできた設定だろう*4

追記

はてなブックマークで、id:machida77さんから以下の指摘を受けた。

元斗皇拳で紫の光を放ったのはソリアだけで伝承者ファルコは金色なので紫微垣関係ない可能性が。

調べてみると、伝承者のファルコは確かに金色だった。また記憶を捏造していたらしい。id:machida77さん、ありがとうございました。

*1:1998年8月。

*2:英語圏では“Milk Dipper”とよばれることがある。

*3:そして丁寧な対応を頂いた。

*4:参考→南斗六星#道教-Wikipedia