かっては混沌としていた
中国では『術数』の名のもとに様々なものが統合され、相互に作用しあっていた。例えば、天文と地理、暦法、算術、蓍龜*1、五行、音楽といったものだ。『数と易の中国思想史』ではこれについて様々な例をあげながら丁寧な解説がなされている。兵書に兵陰陽の項目があることから、兵書もまた術数と関わりを持っている。孫武の『孫子』は現代では兵陰陽の項目がないけれども、本書によると曹操が兵陰陽の項目を除外した孫子が現代まで伝わっているためで、孫子のオリジンには兵陰陽の項目があったそうだ。
算術と術数との関わりといえば、すぐ浮かんでくるのが易の算木だ。算木は本来はれっきとした計算道具でかなり複雑な計算をこなすことができる。こういった算術と術数の関わりは現代にもある程度継承されていて、まじない師のきりん堂さんによるとソロバンを魔除けに使う方法があるとのことだった。
こういった術数の名のもとでの混沌は西洋でも同様で、ピタゴラス教団でも数学、占星術、音楽などが一体化していた。西洋でも天文は、後に狭義の天文学として分離して行く部分と占星術の部分が未分化な時代が長かった。西洋でやっと狭義の天文学が分離し始めたのはケプラーの時代になってからと言って良いだろう。ケプラーは占星術で生計を立てていた占星術師だった。もっとも占星術に対して非常に辛辣な言葉*2を残している。それでもアスペクトをサインの縛りから解放するといった貢献をしているわけで、占星術に対して愛が無かったわけでもないだろう。
なんでこういったことを思い出したかというと、鏡リュウジさんが番宣を兼ねた一連のtweetをしていたからだ。
科学リテラシーと占星術や占いの実践の両立は、論理的には無理ゲーかもしれないけれど、現実的、実存的にはありだと思うのですよ。占いを看板に上げている僕がいうのもなんですが、、科学を教育、頑張ったほうがいい気がする。
— 鏡リュウジ (@Kagami_Ryuji) 2019年5月24日
私にとっては『科学リテラシーと占星術や占いの実践の両立』は困難な話ではない。占星術は“fortunetelling art”の一つなので、科学とは異なるものなのは自明なのだ*3。この辺りに関連する水埜明善さんのtweetが興味深いので引用しておく。
ただなぁ、天文学が占星術と一緒の時代があったり、鉱物学などを含む科学分野とてオカルトから発出していたりする部分があるから、教育するならばそういった歴史的な部分を教えないと引っかかる人も生まれたりする。
— 水埜明善(令和18年) (@genius_bonus) 2019年5月24日
昔のアラビア科学・数学の本なんて読むと、占星術師の側面をぶん投げているくらいだから。
— 水埜明善(令和18年) (@genius_bonus) 2019年5月24日
なお、鏡さんが番宣していた番組というのは、5月30日にNHK BSで放送予定のコズミックフロント☆NEXTの『占星術に魅せられて~星座をめぐる物語~』だ。とりあえず見てみようかと思ってる。