陰陽道と密教
羽田守快先生*1のブログのエントリの一つである『未来を選択する摩利支天』に、密教の『盤法』についての言及があった。羽田先生は『盤法』について以下のように書かれている。
天地二盤を作って算木を措いては除いていくという不思議な祈祷。
おそらくはこの『盤法』は陰陽道で使用されている式盤や算木を導入して構成されたものだろう。平安から鎌倉にかけて、陰陽道と密教の間にかなりの技術的な交流があったのではないだろうか。陰陽道が密教の『焔摩天供』を基に『泰山府君祭』を作り出せ*2ば、密教は式盤や算木を取り込んで『盤法』を作りだしたわけだ。金沢文庫の調査によると、金沢文庫の母体となった称名寺には、天地人の三層構造の式盤を使った盤法があったそうだ。
ところで摩多羅神を描いた掛け軸には2系統あるようで、よく知られているのが摩多羅神左右の丁禮多・爾子多のニ童子の両方が踊っている*3図柄なのだが、別に丁禮多童子が鼓を打ち爾子多童子が踊っている図柄がある。例えば京都の蓮華王院*4に伝わっている摩多羅神像がそれだ。この画像は神社仏閣巡りさんがアルバム『蓮華王院 三十三間堂』で公開されているものをリンクした。
またtwitterで地虫兵衛さんがtweetしていた画像もこの系統になる。
こちらも摩多羅神(マタラジン)。頭上に北斗七星が画かれています。右下の童子が爾子多(ニシタ)左下が丁令多(テイレイタ)でそれぞれ「ソソロソニ、ソソロソ」「シシリシニ、シシリシ」と歌う。シシはつまり「お尻」。そして関西では「おソソ」は女陰の事をさします。 pic.twitter.com/LwFYOzlaOO
— 地虫兵衛 (@zimusibei) 2017年1月26日
この系統の図像で奇妙なのが、踊っている爾子多童子の足元の白い拍子木にも見える『何か』だ。マンガ的表現で音とか地面への衝撃を表しているようでもあるが、数を数えると12本ある。これは算木ではないだろうか。摩多羅神像で摩多羅神の頭上に北斗七星が描かれていることからも摩多羅神と陰陽道には関係がありそうだ。
さて算木を配置して行う呪術というと、奇門遁甲の『玉女反閉局』がある。陰陽道の『反閇(へんばい)』と関わりがありそうなこの呪術では、地に描いた反閉局という図形に算木を配置し、それを移動させることで『門』を作り局内に出入りする。その最も原初の姿は、大野裕司先生が文献を比較することで明らかされている。そしてそれをまとめた論文が『戦国秦漢出土術数文献の基礎的研究 (北海道大学大学院文学研究科研究叢書27)』に収録されている。
この論文を基に圓寂坊の御師さんからの口伝に触れながら、『術奇門・奇門遁甲房中術入門』の『術奇門』の部分をまとめた。この『術奇門・奇門遁甲房中術入門』や「占術夜話」新刊を引っさげて冬コミ【31日東S08b】で待ってます。宜しく。