EPR相関と仏教

ベル不等式の検証

※私の仏教についての理解が正しくないために以下でとんでもないことを書いている可能性があります。その辺りちゃんと判っている方、コメント御願いします。

物理学者のベル(John Stewart Bell)は1964年の論文"On the Einstein-Podolsky-Rosen Paradox"という論文で、全ての存在について局所実在性が成り立つ場合に成立する一般的な不等式を導出した。この不等式は今では『ベルの不等式』とよばれている。ベルはその論文でまた量子力学ではこの不等式が成立しないという結果もしめした。

後にフランスの物理学者アスペ(Alain Aspect)はベルの不等式のバリエーションの一つであるCHSH不等式が成り立たないことを実験的にしめした。結果、自然界においては局所実在性は成立しないことが判った*1。局所性と実在性が両立するというのが局所実在性なのだけれど、破れているのは局所性であるという主張に対して、谷村省吾は日経セイエンス別冊199『量子の逆説』所収の『揺らぐ境界 非実在が動かす実在』において以下のように書いている*2

ちなみにミクロ世界では,物理量の値の実在性は否定されたが,局所性と因果律は守られている。「ベルの不等式の破れは局所性の破れを意味している」と言う物理学者もいるが,それは局所性を注意深く定義せず,早とちりをしているだけだ。

つまり量子の世界では実在性が怪しいというわけだ。そして局所実在性の破綻は物理量の非可換性によってもたらされている。しかし通常の古典力学が通用する世界では局所実在性が成立しているように見えるのは何故か?については以下のように答えられている*3

ミクロ世界の物理量は非可換だが,原子の個数が増えれば増えるほど,だんだん可換に近づいていく。数学的には,原子の個数が「無限大」になると,物理量は非可換性を失い,可換な物理量になる。

つまり量子的にもつれている粒子が2個の場合は実在性が怪しくなるが、多くの粒子が少しづつ実在性を保証しあうことで実在性が担保されて行くということになる。これは仏教が説く諸行無常に対応しているのではないだろうか。仏教ではアートマンも含めて永劫不変な本質は存在せず、全てを関係性から生まれる現象としている。

*1:もっとも諦めの悪い人はそれなりにいるらしい。

*2:同書43頁

*3:同書44頁