これはちょっと見過ごせないな

私の知っている範囲内では、皇極経世書と同じくらい長いスパンで占うことができる術に太乙神数がある。最近、ムーに、太乙神数を使って東日本大震災を読んでみたという記事が出たという話を聞いたので、ちょっと調べてみた。

件の記事は今年の7月号にあった。『衝撃の「風水大予言」』というタイトルで40頁から始まっている。ライターは山道帰一氏だった。太乙神数と風水にどういう係わりがあるのかはしらないけれども、そういうタイトルだった。この記事は六壬の話が導入部に使われていたのだけど、この六壬にいくつかの見過ごせない問題点があったので指摘しておく。

まず東日本大震災は2011年03月11日14:46:18の東北地方太平洋沖地震によるものである。記事において山道氏は、

この課式は、筆者の住む東京を中心に作成されたもので、

と書いているが、東京は日本標準時に比べて19分程進んでいるので、東京における地震発生の時刻は、既に申刻に入っている。ところが件の課式や六壬天地盤は未刻で作成されている。ということで、六壬天地盤や課式は「東京を中心に作成され」たものではないということがわかる。

ただこの天地盤や課式を作成したのは、山道氏の四柱推命の師匠の1人である、鍾進添公なので、全部台湾の時刻に置き直したのかもしれない。ただ未刻としても、以下の記述はあまりに酷い。

また、日支の卯と時支の未は、相冲といわれる大凶の位置関係にあり、「破」となる。

卯と未の関係は普通は会を取るだろう。卯と未が冲とは聞いたこともないし、十二支の相互関係の1つである「破」にもならない。亥−卯−未がそろって三合会局って鍾進添公が得意な四柱推命*1でも当たり前の話だろう。

もう1点、41頁に課式と天地盤があげてあるのだが、この天地盤は正しくない。この天地盤における天将の配布は逆布になっている。しかし乙日の昼貴人は申であり、申の地盤は未刻で辰になる。地盤が亥から辰までは順布なので、鍾進添公の作成した課式において、中伝丑には青龍が乗じるのであって白虎は乗じない。従って以下の記述は端的に言って誤りである。

また中伝の「白虎」が発動すると、一〜四課との組み合わせから、「重喪」「絶気」「財離」という不吉な象意が導き出される。

これだけでもウンザリするのだけれど、一課干上神が申、日干が乙であるところから、「日鬼臨干」としているのだけれども、乙の徳は庚であり庚が奇宮する申は日徳でしょうに。たかだか1頁半くらいの中で、六壬についての記述にこれだけ酷い間違いがある文章は初めて見た。これが間違いでないというなら、記事をセンセーショナルにするために術理をネジ曲げたとしか考えられない、そういう記事だ。

ということで、鍾進添公と山道帰一氏の六壬に信をおくことはできない。

*1:子平でも八字でも良いよ。